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記事一覧
弱小高校演劇部のヒラコ 第1回
【鳥先輩】
鳥先輩はもう被服準備室の中に居て、わたしが中に入ると「おはよう」と言った。低いけど、スッと通り抜ける声の音。少し蒸し暑くなってきたのに、鳥先輩は相変わらずの長いスカート。部屋は紅茶の匂いがする。
「おはようございます」
と私も言う。
16時。ホームルームが終わるのが、水曜日は15時40分。今は朝ではないけれど。早くもないけれど。演劇部員は、というか、演劇をやる人の挨拶は「おはよ
弱小高校演劇部のヒラコ。第2回
【鳥先輩の演説】
何かというと「何で?」と聞かれるのが、ハッキリ言ってウザいし、むかつく。でも、人は何かと「何で?」と聞きたがる。わたしはこの「何で?」が本当に嫌だが、それに嫌がらず応えていくことが、大人であって、社会というものなのかもしれない。
だから、部員が一人しかいない演劇部に入ったのを「何で?」と聞かれるたびに、わたしはこう応える。
「部活動紹介の時の鳥先輩が、かっこよかったから」
弱小高校演劇部のヒラコ。第3回
【市原先生】
「失礼します」とは口にするものの、職員室に入ることがなぜ失礼なのか。失礼をするってことは、職員室に入ることが礼を失う事なのかって話で、納得はできなくて、じゃあだからと言って無言で入ったりするようなこと、わたしはしなくて。
何でかって言うとこの「失礼します」を言わないと生徒であるわたしに敵意を向けてくる教師がいる。「なんで失礼しますって言わないんだ」、とかなんとか言い、自分が教師だ
弱小高校演劇部のヒラコ・第4回
【わたし、書きます】
部活が本格的に始まるのって、いつなんだろう、と思っているうちに、五月のゴールデンウイークは終わり、五月病は始まり、進学クラスのはずのわたしのクラスの中にもさっそく学校に来れなくなった人もいる。連休から三日間、来ない子。わたしはその人の顔を思い出すことが出来なくなってて、あれ? って感じで。太ってた女の子だった。それだけしか覚えてない。お弁当のグループにもたしか入ってなかっ