家族をハッピーにする”お届けもの”【新型コロナ】
土曜の昼下がり。ピンポーンと来客を知らせるインターホンの音で、娘はようやく目を覚ました。宅配便が届いたのだ。
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週明けの火曜だったか、月曜だったか。その辺りから体調を崩していた娘は、まんまとコロナ陽性と診断された。咳が続いていて、体調はあまり良くないようだ。
しかし、隔離されているのを良いことに、毎晩ゲームや長電話に興じている。深夜、娘の部屋からはキャッキャキャッキャと笑い声が聞こえてくるのだ。眠りの浅いわたしは、その度に目を覚ます。まったく迷惑な話だ。
当の本人は、昼下がりまで寝ているというのに。
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話は戻って、注文した覚えのない宅配便を開封する。女の細腕には重すぎる大きな茶色い箱。その箱の中からは、めんつゆ、白米、さんまの蒲焼き、赤いきつね、レトルトの親子丼。
さらに掘り進むと、野菜ジュース、天然酵母パン、チョコレートクッキーまでもが入っていた。
何が届いたかと言うと、コロナ患者のための配食サービスだった。
コロナ陽性の娘と共に、8日間の自宅軟禁状態となったわたし。冷蔵庫の中身が底をつき始めていただけに、この宅配便の神々しさったらなかった。
「これがウワサの配食サービスか~~」と箱に向かってひれ伏したとか、しなかったとか。
自宅療養中、買い物に行けないコロナ患者のために用意された配食サービスは、一緒に隔離されざるを得ない同居家族の心までハッピーにしてくれるのだった。