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『汝、星のごとく』凪良ゆう


すっごく良かった。たくさん気持ちが揺さぶられた。一文一文進むにつれて沸き立つ感情や思いが凄まじい。複雑な愛のいろんなカタチが描かれてる。

第一章 潮騒


暁海と櫂から見るいろんな「大人」
自分が考え方が近いなと思ったのは櫂だった。
瞳子さんの意志の強さや考え方も共感できるけど、不倫を正当化してる部分は共感できなかった。
自分の軸がしっかりしてる分、自分の行動にプライドがあるんじゃないかと思うけど不倫をしている事には抵抗ないのが謎。そこまでいい男なのかな?暁海の父親は。普通のおじさんっぽかったけど。それとも不倫だけども純愛なのだろうか。

ぱっと見は男の子みたいなのに、細やかなところが行き届いている。わかりにくいそれらは、なんだか秘密めいている。

お母さんに悪いってわかってるのに、瞳子さんに憧れてしまっている暁海。自分の素直な感情が、周りの環境や他人の感情で無下にされる。人の影響を受けるって、自分をなくす事でもあるのが複雑。

櫂が瞳子さんに「人間はそんなに単純じゃない」みたいなこと言ってて、それはその通りなんだけど、恋愛や他人と関わるいろんな複雑さを幅広く知らないから言える事なのかなって思った。自分と周りの環境で単純でないことを知っているけど、相手が単純に見えても複雑な可能性をまだ分かっていないんだなあって。

第二章 波蝕


東京に行った櫂と島に残った暁海の距離感が段々と離れていく感じが辛い。櫂の仕事や環境に理解を示そうと我慢する暁海。そうなるとどんどんすれ違いが起こるよね。この章きつい。ずきずきする。

こういう女の子の話みるともやもやする。自分が辛い、心がどんどん削られてくのがわかるのに、依存したり存在を必要としてしまう人の気持ちが分からないや。

「井上暁海 二十五歳 夏」と「青埜櫂 二十五歳 秋」
暁海に見えてる櫂と、櫂の考えてること、視点が違うとまったく違うものになる。

第三章 海淵


前章と違って、櫂の未練がすごい。そこまで暁海を愛してた感じなかったのに。安心感と侮りは似てるって本当みたい。

櫂の、居候してる人の表し方「女」で通してるのちょっと面白いと思ってたらそういう理由かって、なるほどだった。

暁海は暁海でずっと櫂が頭から離れない。好き。離れたくない。単純にはいかない。

ーこれから先の人生を、ずっとひとりで生きていくことがぼくは怖いです。
ーきみは『ひとりで生きる』ことが怖くはありませんか?
ー怖いです。
(中略)
ーそれなら、ぼくと共に生きていきませんか。
それは愛や恋とは別の、けれどなによりもわたしを救ってくれる言葉だった。

一方で、誰とでも、なにとでも、結婚できればいいのにとも思う。男同士でも、女同士でも、ペットでも、物語の登場人物でも、理由が恋や愛以外でも、本人たちがいいなら三人でも四人でも結婚できればいい。結婚しなくても結婚と同じ保障があればいい。籍を入れなくても手術の同意書を書かせてほしい。危篤のときは病室に入れてほしい。遺産を譲りたい人だけにスムーズに譲らせてほしい。名字の変更はしたい人だけがして、しなくてもいい人はそのままでいさせてほしい。他にもある数限りない不便や理不尽がなくなってほしい。

櫂と尚人の話はつらくて泣いた。希望が見えたのに、溢れちゃうなんて。

全体を通して


瞳子さんと北原先生のことをもっと深掘りしていろいろ知りたかったけど『星を編む』で出てくるのかな。
特に瞳子さん。不倫には賛同できないけど人物的に魅力のある人だなと思う。自分の軸もあって考え方が確立している。だから不倫をするようなイメージが持てなくて、瞳子さんのバックグラウンドが気になる。

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