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【うつになった大学生】    季節を喜ぶ。

秋が来た。

朝家を出たわたしの前を、秋風が通り過ぎて行った。

それが嬉しくて大きく息を吸った。

季節を喜べる感情が嬉しかった。

砂を噛むような日々が終わったのだ。

今年の春は喜べなかった。

わたしの上には冬が蔓延っていて、いつまで経っても春が来なかったから、辺りの春を見てはひとり置いていかれるようで孤独だった。

でも今は違う。

夏が過ぎ、秋が来たことを喜んでいる。

季節を喜べることは、健康なことだと思う。

空を見て可愛いと思う感情も、木を見て生きていると思う感情も、夕日を見て綺麗だと思う感情も、全部全部尊い。

うつはわたしに文書を書かせた。

うつは創作の種だった。

けれど、その最中で、わたしはいつも季節を喜ぶ詩を書きたいと願っていた。

今なら書けるのかもしれない。

生きるか死ぬか、みたいな文章じゃなくて、季節を謳う文章を書きたい。

どの季節も、ちゃんと生きていたい。

秋は好きだ。

誕生日があるし、美味しいものもある。

散歩するのにちょうどいい季節でもある。

生きるにちょうどいい季節だと思う。

今日は朝から晩まで音楽を聴いて、夜は何駅も歩いて、たまに美味しいものを食べて、編み物をして、絵を描いて、そして文書を書いている。

秋だ。

わたしが好きだった秋。

去年は感じられなかった幸せがちゃんと帰ってきた。

勉強も好きだけど、わたしの人生はもう少し豊かなのかもしれない。

お勉強だけで終わらすには、わたしはあまりに勿体無いのかもしれない。

わたしはもっと、感性のままに生きてみたいのかもしれない。

そんな人生がいい。

論理ではどうにもできない柔らかいものを、懸命にかき集め続ける人生がいい。

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