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まねき食品×崎陽軒関西シウマイ弁当(兵庫県姫路市)|柳家喬太郎の旅メシ道中記

当代一の落語家・柳家喬太郎師匠。お声がかかれば全国あちこち、笑いを届けに出かけます。旅の合間の楽しみは、こころに沁みる土地の味。大好きなあのメシ、もう一度食べたいあのメシ、今日もどこかで旅のメシ──。この連載「旅メシ道中記」では、喬太郎師匠の旅メシをご紹介します。

「シューマイ」か「シウマイ」か。崎陽軒きようけんが体に染み込んでいる横浜育ちとしては「シウマイ」と名のつくものに敏感です。だから3年前「関西シウマイ弁当」が発売されたときは、トキメキましたねぇ。ちまたでも話題になった、姫路の老舗駅弁屋・まねき食品と我らが崎陽軒とが、コロナ禍で大打撃を受けた駅弁業界を盛り上げようとタッグを組んで作ったお弁当です。

 めぐる月日も三年みとせ越し。ついに食べることができました。なんとまぁパッケージからしていいじゃあないですか。水晶玉の横のイラストが、崎陽軒の龍に対してこちらは虎で龍虎りゅうことは、心憎い! 経木きょうぎの折で詰め方が一緒なのもうれしいけど、おかずの方は、鯖の幽庵焼、出汁巻玉子、あご出汁唐揚げと、シウマイ弁当を関西文化で解釈した顔ぶれが並び、舌を楽しませてくれます。とくに、拍子木切りの筍煮は、まねき食品が展開する姫路駅名物えきそば*1の出汁で炊かれていて“まねきのDNA”を感じさせる。でもって主役のシウマイ。見た目やサイズは「昔ながらのシウマイ」と同じだけど、食感が違う! もっちりシャキシャキ、ご飯がすすむ!

「刻み蓮根入りで、鰹と昆布出汁のうま味を利かせているのも関西風。崎陽軒さんがこのお弁当のために作った関西シウマイです*2」と教えてくれたのは、まねき食品の6代目・竹田典高のりたかさん。とはいえ開発はトントン拍子にはいかず、完成まで1年半かかったそうです。

「シウマイ弁当のあんずのような、おかずにも甘味にもなる一品を作るのも難題でしたが、ご飯の水加減にも苦労しました。崎陽軒さんからは“経木の蓋に米粒が少し付くのが目安”という細かいお題……応えてみせました!(笑)」

 崎陽軒への敬意を表しつつ、幕の内駅弁の元祖であるまねき食品が培った経験と技術を存分に生かした関西シウマイ弁当。魂ともいえるシウマイを他社に預けた崎陽軒の懐の深さもすごいけど、その信頼に応えたまねき食品もお見事! 駅から人が消えた日があったからこそ生まれた、東西の同志による駅弁への情熱が結実した弁当。どっちがうまいとかじゃあない。上方落語の「時うどん」が東京で「時そば」になり、どちらも面白味のある噺になったように、東西それぞれ味わい深いんです。元横浜市民としては、シウマイ弁当に親友ができたみたいで、ただただ、うれしいのであります。(談)

談=柳家喬太郎 イラストレーション=大崎𠮷之

*1 和風だしにかんすい入りの中華麺を合わせた姫路のソウルフード 
*2 崎陽軒の「関西シウマイ」。関西地区での催事限定で販売

【まねき食品】
1888(明治21)年創業の老舗駅弁メーカー。89年、駅構内で幕の内弁当を全国で初めて売り出し、1949(昭和24)年にはえきそばの販売を開始。現在は冷凍弁当や「たけだの穴子めし」も展開する。6代目は新幹線乗車時、乗客の弁当を持ち前の動体視力で一瞥しながら隈なくチェックするなど、研究に余念がない。

【関西シウマイ弁当販売店】
まねき食品本社ドライブスルー(10時~14時)、姫路駅構内中央売店(午前は9時~、午後は14時~)など(販売店は下記のURLよりご確認ください)
*予約不可、売り切れ次第終了 
[料]1,080円
https://www.maneki-co.com/kansai-siumai/

【師匠プロフィール】
柳家喬太郎
(やなぎや・きょうたろう)
落語家。1963年、東京都世田谷区生まれ。大学卒業後、書店勤務を経て89年に柳家さん喬に入門。2000年真打昇進。「姫路駅前にある“たけだの穴子めし”も絶品よ! 姫路に行ったら関西シウマイ弁当と両方食べてほしい!」

出典:ひととき2024年9月号

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