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東京で、わざわざ行きたい小さな書店へ

「独立系」と呼ばれる小さいけれど個性的な書店が人気です。店主が独自にセレクトした本が並ぶ、落ち着きの空間は、読者がリアルに本と触れあえる場所として親しまれています。わざわざ足を運んでみたくなる、独立系書店をご紹介します。

本も雑誌もスマートフォンやタブレットなどの情報端末で読むことが当たり前の現代。紙の本には逆境の時代ともいえますが、本との予期せぬ出合いが期待できる書店の棚は、今も昔も変わらず読書ファンをひきつけています。

特に、“独立系”と呼ばれるチェーン店ではない個性的な小売書店は、読書好きに支えられて、東京では増加傾向にあり、そのスタイルは十店十色です。

今回は、書棚ごとにオーナーがいるシェア型、店主が偏愛する分野の本を集め、界隈の人々のサロンとなっている書店など、小さくとも個性的な輝きを放つ書店をご紹介します。各店主の方には、読めば旅に出たくなる、おすすめの本も教えていただきました。

□■ 神保町 ■□
PASSAGE・bis! BOOKS & CAFE

PASSAGEの店内

都営地下鉄三田線・新宿線、
東京メトロ半蔵門線 神保町駅 徒歩約1分 
千代田区神田神保町1-15-3 サンサイド神保町ビル1F
(3Fにbis! BOOKS & CAFE)
営業時間:12時~19時 定休日:なし
https://passage.allreviews.jp/

オーナーは仏文学者の鹿島茂さん、店主はご子息の由井緑郎さんで、362ある棚ごとに棚主がいる共同書店だ。棚主は作家や版元、音楽家から内科医まで多彩。ジャンルもさまざまな思い思いの“推し本”が手書きポップで彩られる、本への愛に満ちた空間

手書きポップを読み、棚に並ぶ本の背を見ていると、
あっという間に時間が過ぎていく
3階にはカフェ併設のPASSAGE bis!
軽食や近隣の銘菓を提供
パリのパサージュ(アーケード街)を思わせる店舗入り口
神保町・文銭堂の「フレッシュムーン」と、
青色のハーブティー「蒼穹」

\店主おすすめ/
旅に出たくなる1冊

ラーメン大全
西尾了一 著 旭屋出版
2021年 定価4,730円

ラーメンチェーン「凪」創業者による1,000ページを超える大作で、レシピから日本各地のラーメンの特徴までが網羅・詳説されています。分厚さからも熱量が伝わってくる本で、ご当地ラーメンを食べに行きたくなりますよ。一番気になるのは、とんこつ系の宇部ラーメン(山口県)ですね(由井緑郎さん)


□■ 祖師ヶ谷大蔵 ■□
BOOKSHOP TRAVELLER

小田急小田原線 祖師ヶ谷大蔵駅 徒歩約2分 
東京都世田谷区祖師谷1-9-14
営業時間:12時~19時 定休日:火・水曜
https://traveller.bookshop-lover.com/

“本屋ライター”として『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』(G.B.)などの著作を持ち、独立系書店の動向に詳しい和氣わき正幸さんがオーナー。和氣さんや棚主が選んだ新刊販売と書店のアンテナショップを兼ねており、本好きの間では知られた存在だ

店舗は祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩約2分
お客には、近くにある日本大学の学生さんも多いそう
店内は約100店の棚主が出店する棚と新刊棚で構成され、2階はアートギャラリーも兼ねている

\店主おすすめ/
旅に出たくなる1冊

東京ホテル図鑑
遠藤 慧 著 学芸出版社 
2023年 2,750円

一級建築士でもある著者が、老舗ホテルからラグジュアリーホテルまで、東京のさまざまなホテルの間取りやアメニティー、食事などをカラー水彩の実測スケッチで描いた本です。間取りのイラストを眺めているだけでもきれいで楽しいし、こういう場所に泊まる旅に出てみたくなります(和氣正幸さん)


□■ 駒沢大学 ■□
地理系ブックカフェ空想地図

東急田園都市線駒沢大学駅徒歩約4分 
世田谷区駒沢2-5-14 K-House駒沢 B1F 
☎03-6450-7085 
営業時間:12時~21時、日曜、祝日は11時~20時(いずれも料理LOは閉店30分前) 
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、*火曜までの連休になることもあり
https://chirikeibookcafe-kuusouchizu.owst.jp/

子供の頃から無類の地図好きだった田中利直さんが開いた地図関連書籍専門のブックカフェで、古地図や道路地図、路線図などを眺めながら過ごすことができる(ほとんどの書籍は販売しておらず、店内閲覧のみ)。地図好きのためのイベントも実施

壁には田中さん作の、
架空の町を子細な地図に起こした「空想地図」が掛かる
人気メニューはチーズを使った「自家製とろっとろジオムライス」。ホットドリンクは地図柄カップで提供!

\店主おすすめ/
旅に出たくなる1冊

東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!
栗原 景 著 東洋経済新報社
2016年 1,100円

前職の会社員時代、出張で乗った東海道新幹線の車窓から見える謎の看板「727」や次々現れる工場が「あれは何だろう」と気になっていたけれど、本書を読んで「へえー」と納得。車窓から見える82カ所のスポットが解説されており、東京~新大阪間の移動時間が楽しみになる一冊です(田中利直さん)


□■ 北品川 ■□
KAIDO books & coffee

京急線新馬場駅徒歩約5分、JR品川駅徒歩約20分、りんかい線天王洲アイル駅徒歩約15分
品川区北品川2-3-7 丸屋ビル103 
☎03-6433-0906 
営業時間:9時〜18時 
定休日:月・火曜 *1階はペット同伴可

旅をテーマに、全国の歴史や文化にまつわる約12,000冊の本を扱うブックカフェ。旅関連のイベントを開催することも。販売用の古本と閲覧用とがあり、購入できる本もある。「この店で出合った本から旅のきっかけが生まれるとうれしい」と、店主の佐藤亮太さん

周辺は宿場町の面影を残し、散策も楽しい
フードメニューも充実。パン、ソーセージなどが全て手作りのKAIDOホットドッグ(奥)と、外はカリッと中はしっとり、紅茶(静岡産べにふうき)の生スコーン

\店主おすすめ/
旅に出たくなる1冊

望郷の道(上・下)
北方謙三 著 幻冬舎文庫 
2013年 各755円

著者の祖父母の半生を描いた作品で、北九州の無頼漢だった祖父が日本統治下の台湾でキャラメル会社を起こし、大成功を収めて北九州に帰国。日本統治下の台湾のことを知ってから台湾に行くと、当時の建造物などが新鮮に映ります。本を読む前後で旅先の見え方が変わりました(佐藤亮太さん)

写真=荒井孝治

出典:ひととき2024年10月号

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