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【臺北賓館】重厚かつ優美な雰囲気をまとった総督の官邸|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(1)
台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作『台北・歴史建築探訪』。このほど発刊される増補版では、コロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど約40件が追加されています。この連載では、『増補版 台北・歴史建築探訪』より11点をご紹介致します。日本人と台湾人がともに暮らした半世紀を振り返りつつ、また台湾を旅したくなるような場所、建築物をぜひお楽しみください。
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この建物はかつて台湾総督の官邸だった。広大な敷地の中にあり、瀟洒な西洋建築がどっしりとした構えを見せている。3階建ての建物で、煉瓦と石材を混用して造られている。デザインはフランス風バロック様式と呼ばれるもので、荘重な印象が建物全体を包み込んでいる。左右が非対称で、曲線を多用して美しさを追求するスタイルだ。こういった様式は台湾では希有な例となっている。
初代の官邸は1901(明治34)年に落成していたが、白蟻の害に遭い、わずか10年あまりで改築されることとなった。増改築の意匠は台湾総督府土木部営繕課の森山松之助と八坂志賀助が担った。建物の竣工は1913(大正2)年3月31日だった。
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全体が暗めの色合いで覆われているため、華やかさのようなものは感じられないが、その分、周囲を威圧するような風格を漂わせている。建物の四方にベランダが設けられていることも特色とされていた。
館内には真紅の絨毯が敷かれ、上からはシャンデリアが迫ってくる。ここは官邸であると同時に、台湾総督府の迎賓館も兼ねていたので、台湾へやってきた賓客たちは、必ずここを訪れ、総督府主催の晩餐会に招待された。
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官邸本館の脇には一軒の木造家屋が残っている。これは1920(大正9)年、久邇宮邦彦王の渡台に際して設けられた。同年8月に田健治郎総督の指示で工事が始まり、10月14日に竣工。総督家族はそれまで暮らしていた本館からこの木造家屋に移り、本館を来賓用の宿泊所とした。ちなみに、来賓一行は10月20日に基隆港に到着し、各地を視察。11月1日に台湾を離れている。
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1923(大正12)年4月、当時、皇太子だった昭和天皇は、摂政として台湾を行啓し、ここに宿泊している。その際、皇太子が集まった民衆に手を振ったというお立ち台は今も残っている(写真下の右手3階部分)。そこからは官邸の敷地内に繁茂する緑と、完成して間もない台湾総督府の庁舎が眺められた。皇太子は集まった民衆を前に、何を思い、何を感じたのか。興味の尽きないところである。
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周囲には高い壁が設けられているため、建物の全容を目にすることはできない。しかし、お立ち台に関しては、堀の外からでも見ることができる。現在は年に数回の開放日が設けられ、館内の見学が可能となっている。これに日程を合わせて台湾を訪れる外国人旅行者も少なくない。
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文・写真=片倉佳史
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片倉 佳史 (かたくら・よしふみ)
1969年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。武蔵野大学客員教授。台湾を学ぶ会(臺灣研究倶楽部)代表。台湾に残る日本統治時代の遺構を探し歩き、記録。講演活動も行なっている。妻である真理氏との共著『台湾探見 ちょっぴりディープに台湾体験』『台湾旅人地図帳』も好評。
●ウェブサイト「台湾特捜百貨店」
▼臺北賓館(旧台湾総督官邸)
*特別公開日のみ見学可能。日程は下記公式HPを参照
https://subsite.mofa.gov.tw/entgh/cl.aspx?n=6405
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