「よちよち歩き」で樹を上るエゾモモンガの赤ちゃん|愛しい北海道ANIMALS
写真を始めた頃は会えると思っていなかった、憧れの動物だったエゾモモンガ。あの可愛い姿を撮影するのはとても大変。やっとの思いで巣穴を見つけても夜行性の動物、警戒すると真っ暗になるまで出てきてくれません。撮影できるまでには本当に多くの時間を要しました。冬は深い雪の中、カメラが使えなくなるほどの寒さに耐えなければならなかったり、赤ちゃん誕生の時期には虫に刺されていてもじっと我慢するしかなかったり……。それだけに、うまく撮影できた時の喜びは本当に大きなものでした。
夜行性のエゾモモンガですが、今のカメラの性能なら多少暗くても綺麗に撮影できます。以前よりチャンスは増えましたが、明るいところで撮影できればそれに越したことはありません。下の写真は恋の季節、明るい時間にメスが出てくるのをじっと待つ可愛いオスのエゾモモンガです。
やがて春になり、この子も恋を実らせたのでしょう。お母さんです。辺りを警戒しながら明るい時間に巣穴から出てきて、周辺の葉っぱが無くなっちゃうかも……と思うほど凄い勢いで食べていました。子育てって大変ですよね、お母さん!
そんなお母さんの姿を観た数日前、初めて小さなお顔を確認。その時の感動はなんと表現したらよいか、とにかく可愛いすぎました。巣穴から顔を出したり引っ込めたり、チョロチョロと動くこの子。巣穴には、3匹の子供とお母さん、すこし大き目の1匹、ぜんぶで5匹が同居していました。一部の動物はヘルパーと呼ばれる母親とは別に子育てを手伝う個体もいるらしく、行動を観ていると、すこし大き目の子はヘルパーだったのかもしれません。
数十日にもわたる観察のあいだ、明るい時間に巣穴から出てきたのはお母さんが2度ほどでした。
ところが、ある暑い日のこと。チョロチョロと巣穴から顔を出したかと思うと、頭と体が同じくらいの大きさの可愛い子が、ついに全身を出して絵に描いたような「よちよち歩き」で樹を上り始めたんです。
まさかのことに焦りと感動を覚えながら、なんとか動画に収めました。ただ手振れがひどいのはおゆるしを。
その日の様子は拙著『愛しい北のANIMALS~優しい時間』でもご紹介しています。
明るい時間に二等身のエゾモモンガの赤ちゃんを撮影できたのは、この一度きり。とても貴重な体験でした。いつかまた、暗闇や虫の恐怖を忘れた頃に、会いに行けたらと思います。なんと言っても私のアイドルですから。
文・写真=結び
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