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切っても切れない大事な島|沖昌之(猫写真家)

各界でご活躍されている方々に、“忘れがたい街”の思い出を綴っていただく連載あの街、この街。第47回は、猫写真家の沖昌之さんです。島民よりも猫の数が多い島で過ごす、ほのぼのとした時間が伝わってきます。

猫写真を撮り始めたのが2014年。

2015年に新潮社より『ぶさにゃん』という写真集が刊行され、我ながらプロっぽいことしてるじゃんと思っていたのですが、撮影場所は自宅から徒歩30分圏内とテリトリーが異様に狭く、趣味で猫の撮影をしている友達のほうが猫島を訪れた回数が多くて、こんなプロ恥ずかしいなって気持ちと、自分が猫島に行ったらどんな写真を撮るんだろうという興味が相まって、猫島に行ってみようと決意したのが2017年。

3年近く動かなかった重い腰をあげ、向かった先は香川県の佐柳島さなぎじまでした。

30代後半まで数えるほどしか一人旅をしたことがなかったので、宿泊の「何泊」の意味もいまいちわからず指折りながら数えていたし、飛行機に乗るときは保安検査場でベルトを外さないとダメなことを知らずにもたついたり、なんなら国内線なのにパスポート持ってなくて大丈夫なのかって不安になったり……。強烈なダメ人間でしたが、どうにか多度津たどつ港からフェリーで1時間くらい波に揺られ、佐柳島の本浦ほんうらに到着。

都内では猫が5~6匹集まっているだけでも上等なのに、佐柳島では桟橋を歩いて1分も経たないうちに猫の大群が眼前に現れ、どうやって撮っていいかわからなくてテンパったのも今となってはいい思い出かな。

3月の瀬戸内の気候は穏やかですごしやすく、島民の方は旅人にやさしくて気軽に挨拶をしてくれるので、若干コミュ障な自分にとっては本当に救われました。

猫は島民以上にフレンドリーで、ご飯やおもちゃを持っていなくても側にやってくるし、24mmのレンズの焦点距離より近づくので「撮影できないやん……!」って嬉しい悲鳴を上げながらも猫を撫でていました。

癒されたなぁ。

今では10回以上、佐柳島に訪れています。ネコノシマホステルという島唯一の宿泊施設に1週間くらい滞在、日の出から日没までひたすら撮影し、夕食後は写真のピックアップや色の調整と、合宿のような修羅な生活を送っています。日中は島民の方が家でくつろいでいることもあり、外の世界には自分と猫だけしかいない、瀬戸内海の優しい波の音に癒される時間でもあります。

猫がまったりとして動かず、撮影できないなって時は自分も防波堤にもたれながら、猫と一緒にうとうと眠っていることもあります。

佐柳島は自分の作品にとって、自分の人生にとって、切っても切れない大事な島になってきました。

文・写真=沖 昌之

<写真展開催のお知らせ>


沖 昌之写真展「ネコなんです。」
日時:2024年10月10日(木)~11月16日(土)
   10時~17時30分(日曜・祝日休館)
会場:キヤノンオープンギャラリー1(品川)
詳細はこちら

【トークイベント 】
日時:2024年10月19日(土)13時30分~14時30分
会場:キヤノンホール S (東京都港区港2-16-6 キヤノン Sタワー 3F)
定員:150名(先着申込順、参加費無料)
申込はこちら

©Madoka Yamada

沖 昌之(おき まさゆき)
猫写真家。1978年 兵庫県神戸市生まれ。2009年、東京のアパレルに勤務するまでカメラに興味はなかったが、宣伝用人物・商品の撮影担当ののち、2013年大晦日に初恋のネコ「ぶさにゃん先輩。」に出会い2014年の元旦から猫の撮影を開始。2015年 37歳 猫写真家として独立。猫の表情や仕草から想像できる感情や猫同士の複雑な関係性など人間臭さを感じさせる猫の内面にスポットを当てその瞬間を撮影。2017年刊行の代表作「必死すぎるネコ」は、「天才!志村どうぶつ園」「スッキリ」などで紹介され話題、シリーズ3作で累計8万部突破。2019年アパレルブランドZUCCAとコラボ、2024年 國立臺灣師範大學・臺灣設計口で個展を開催。現在は「AERA」「猫びより」「デジタルカメラマガジン」で連載中。instagramのフォロワーは47万人(2024年10月現在)と数多くのファンを獲得。
instagram:@okirakuoki
X(旧Twitter):@okirakuoki

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