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月岡芳年の浮世絵と現代のアーティストが織りなす神秘の空間──ホテル雅叙園東京「月百姿×百段階段〜五感で愉しむ月めぐり」

ホテル雅叙園東京で開催中の企画展「月百姿×百段階段〜五感で愉しむ月めぐり」の見どころを、現地からお届けします。(開催期間:2024年12月1日まで)

月百姿つきのひゃくし」とは幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師、月岡つきおか芳年よしとし(1839-1892)の晩年の大作。日本や中国の物語や詩歌、歴史上の逸話、武士や女性、妖怪や幽霊など、月にまつわる百の場面が描かれたシリーズです。

本展では、浮世絵コレクターとして知られる斎藤文夫氏のコレクションの中から「月百姿」の作品20点を前後期に分けて展示。現代のアーティストによる月をモチーフにした魅力的な作品にも出会えます。

東京都指定有形文化財「百段階段」

文化財建築で味わう浮世絵

99段の階段が絢爛な7つの部屋を繋ぐ文化財「百段階段」で、浮世絵をテーマにした展示が行われるのは今回が初めてとのこと。長押なげしに施された黒漆のでん細工が美しい「十畝じっぽの間」では、行燈あんどんの灯りのもとで風流に「月百姿」を愉しむことができます。

十畝の間

また美人画の大家、鏑木かぶらき清方きよかたが愛着をもって造った「清方の間」では、芳年の系譜を継ぐ清方*の画に囲まれながら、「月百姿」の作品を眺めることができます。ここでしか味わえない、時代を超えた貴重なコラボをお見逃しなく。

*鏑木清方(1878-1972)は水野年方の門下生で、その師匠にあたるのが月岡芳年

清方の間に展示されている
「舵楼の月 平清経」と「北山月 豊原統秋」
(※特別な許可を得て撮影)

伝統的な技法で作られた“和紙の月”

漁樵ぎょしょうの間」に浮かぶ1200mmの美しい和紙の月は、灯り作家の高山しげこさんが構想から約3か月をかけて完成させたもの。き上がったばかりの和紙にシャワーなどで水滴を落として模様をつける「落水らくすい」という伝統的な技法を用いることで、月の表面のような表情が生まれると言います。

また黒っぽい模様は、紙の厚みを増すと背後から光を当てたときに陰影が現れるとのこと。衛星画像のようなリアルな月面ではなく、あくまで私たちが地球上から見ている月に近い表現をしたそうです。

五感で味わうお月見

つぎの「草丘の間」では、静かに響く虫の音と、プロジェクションマッピングによって刻々と表情を変える月が、私たちを幻想的な世界へと誘います。風に揺れるススキの間に立てば、月を背景に収めたフォトジェニックな一枚が撮影できます。

千年の時を超える普遍的な美

「静水の間」の床の間には、日本画家の岩谷晃太さんが和紙に岩絵の具で描いた掛け軸「月と稲妻」が飾られています。千年前の人にも、千年後の人にも伝わるような普遍的な美しさを描いたという作品は、日本画にはあまりない陰影をつけることで、立体感を閉じ込めたと言います。

月を眺めるということ

「星光の間」には、幼い頃から月に安らぎを感じ、憧れを抱いてきた芸術家の伊藤さくさんの作品12点が飾られています。なかでも目を惹くのは、部屋の奥に立てられた大きな屏風絵。ここには、地球にいる私たちと月のエネルギーが呼応し合い融合するイメージが描かれていると言います。

写真提供=Tokyo International Gallery
写真提供=Tokyo International Gallery

月は古来より、私たちの生活や文化と深く関わってきました。月岡芳年や現代のアーティストの研ぎ澄まされたフィルターを通してその姿を見つめ直すことで、私たちが日々の中で忘れてしまった大切なものを思い出すきっかけになるかもしれません。

文・写真=飯尾佳央

月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~
■期間
2024年10月5日(土)~12月1日(日)
※11月5日(火)は展示替のため休館
■時間
11:00~18:00(最終入館17:30)
■会場
ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
■料金
一般:1,600円
大学・高校生:1,000円
小・中学生:800円
※未就学児無料、学生は要学生証呈示
■主催
ホテル雅叙園東京 
■企画展公式サイト
https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/tsukinohyakushi

▼おすすめの書籍

月岡芳年 月百姿
日野原健司 著(青幻舎)

本展を企画するにあたり、ホテル雅叙園東京の学芸員・梶野桜さんも参考にされたという一冊。著者は、渋谷区の浮世絵専門美術館「太田記念美術館」の学芸員・日野原健司さんで、「月百姿」全100点の解説のほか、摺りのテクニックや、構図の魅力などもわかりやすく解説されています。本書は「月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~」展会場内のミュージアムショップでも購入することができます。
また、太田記念美術館では現在、「広重ブルー」展が開催(2024年12月8日まで)されており、「月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~」展との提携割引も実施中です!(→詳しくはこちら

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