【駿府の工房 匠宿】お茶染めでサスティナブルな染物を|林家たい平さんと楽しむ駿河和染
丸子宿~東海道五十三次 二十番目の宿場
丸子宿にある「駿府の工房 匠宿」。鷲巣恭一郎さんは、工房「竹と染」内の和染の工房長になって1年余り。静岡の茶葉を使った独自の染物を編み出したパイオニアで、「お茶染めWashizu.」を立ち上げた。
「紺屋町にあったうなぎの寝床みたいに細長い家に育ったんです」。半纏やのれん、幟など印物と呼ばれる型染を請け負う紺屋は、染めの作業で布を張るため細長い土間が作業場で、鷲巣さんはその五代目に生まれた。病に臥した父の後を継ごうと決めたのは21歳。手ほどきを受けながら、化学染料でのれんなどを染めていた鷲巣さんの許に、ある日、茶農家の先輩が茶葉の袋をどさりと持ち込んだ。処分することもできず倉庫に放り込んだままだった茶葉を、不意に思い出したのが始まりだ。
下請け仕事に疲弊を覚え始めた頃でもあった。展示会で見た工芸作品に触発されて、自分もオリジナリティーを持ちたいと考えあぐむなか、閃いたのが茶葉だった。試行錯誤を重ねて数年、濃い焙じ茶色をした浸出液で煮染めを繰り返し、木酢酸鉄を添加して、じっくり入念に温度を上げながら色が変化する際まで煮染める。「煮れば煮るほど色が微妙に変化して、墨っぽい色になっていくんです」
その地色へ抜染糊で型染模様を表す。「印物の型染から出発したので、やっぱり型染をやりたかった」と笑う。
工房に入るや、たい平さんは壁に掛けてあった薄墨色のストールを首にくるり。「色がすごくいいですね」とご満悦だ。
旅人=林家たい平 文=片柳草生 写真=阿部吉泰
──この続きは本誌でお楽しみになれます。廃棄されるはずの茶葉を蘇らせる「お茶染め」。江戸時代に各地に普及した藍染のように、鷲頭さんはこれを文化として広げたいと考えます。この後、たい平さんと鷲頭さんは熱心に語り合い、「お茶染め」の今後の展開についてアイデアが尽きません。本誌では、たい平さんが敬愛する芹沢銈介の美術館や、ミラノのデザイナーともコラボしたろうけつ染、素朴な味わいの型染など、さまざまな技法で新たな作品づくりに取り組む老舗の工房を巡ります。ぜひお楽しみください。
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出典:ひととき2023年4月号