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論語と算盤に見る、「今」の私たちへのメッセージ

本の紹介者:あい 
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こんな人に読んで欲しい
・資本主義の在り方を多面的に考えたい人
・より良い社会づくりに興味がある人
・逆境に立たされており、その対処を見出したい人

1.資本主義について考える

大河ドラマ「青天を衝け」で話題の渋沢栄一氏著「論語と算盤」。

去年から何度となくこの本を取り上げようと思いながら、熟読された方もいるだろうと思うと勝手にプレッシャーを感じて筆が進まない状況でした笑
ではありますが、本当に素敵な本なので、独自の視点からご紹介しようと思います。

コロナ禍により人類が立ち止まって考える時間が出来たからか、環境問題が待ったなしであることに多くの人が気が付きました。
そして、「売上利益を増やすことが企業活動のど真ん中」という考え方を修正する動きが活発化しています。
ケインズの修正資本主義とはまた少し違って、『人新世の「資本論」』にあるような、経済成長を追い続けない姿勢です。

論語と算盤が執筆された当時は、今とはかなり違う時代背景です。
ただ、書いていることを抽象化すると、資本主義の問題点を考える、という意味では最近取りざたされている資本論と共通していることが分かります。

もともと「資本主義」や「実業」とは、自分が金持ちになりたい、利益を増やしたいという欲望をエンジンとして前に進んでいく面があります。しかし、そのエンジンはしばしば暴走し、様々な惨事を引き起こします。
渋沢氏はその問題点に気が付いており、「実業」や「資本主義」の暴走に歯止めをかける枠組みとして「論語」というアプローチをとった、ということだと理解しています。

この本の<第4章 仁義と富貴>では
「物事を進展させたい、豊かさを実現したいという欲望を心に抱き続ける一方で、その欲望を実践していくために道理を持ってほしい」という渋沢氏の思いを書いています。その道理とは、社会の基本的なバランスをよくとって推し進めていくことです。
金銭に罪はないし、生活をするためにはお金がいります。
ただ、お金はよく集めて、良いことに使うべきだと主張しています。

『資本主義は放置すると「実利」を最優先に追求する仕組みになっていて、長期的に見ると災いに転換する可能性が高い。だからなんらかの歯止めが必要だ』そしてその歯止めとして、論語を活用しよう、というのが渋沢氏のアプローチです。

2.「今」の私たちへのメッセージ


この本は第1章から第10章まであります。全てを取り上げるわけにはいかないので、もう1つだけ。

<第1章 処世と信条>に、今このコロナ禍における私たちへのメッセージとも思える言葉があります。


逆境に立たされる人は、ぜひともその生じる原因を探り、それが「人の作った逆境」であるのか、それとも「人にはどうしようもない逆境」であるのかを区別すべきである。
このうち「人にはどうしようもない逆境」とは、人間の真価を試される機会に他ならない。
(中略)
逆境に立たされた場合、どんな人でもまず、「自分の本分(自分に与えられた社会の中での役割分担)」だと覚悟を決めるのが唯一の策ではないか、ということなのだ。
天命に身をゆだね、腰をすえて来るべき運命を待ちながら、コツコツと挫けず勉強するのがよいのだ。

ステキな言葉ですね。

覚悟を決めて、コツコツと挫けず努力する。正直折れそうになることも多々ありますが、希望を持ち、でも心穏やかに一定のペースで積み重ねる。
これができるとできないとで、大きく変わってくると、私自身もこの言葉を心の中で何度も自分に言い聞かせています。

3.【番外編】渋沢さんも人間。善と悪の合金でもあり、得手不得手もある。


渋沢さんは巨額の富を得ながら私心なく世の中に貢献された、素晴らしい方だと感じています。
とはいえ、単にすごい人、というだけではものの見方として偏りが出るので、この本の最後にある「渋沢栄一小伝」から意外な一面をご紹介します。

時代的なこともあるかもしれませんが、お妾さんがたくさんいて、お子さんは30人以上(!)いたそうです。びっくり。
ご自身でも「婦人関係以外は、一生を顧みて俯仰天地に恥じない」と語っています。

個人的には「やっぱり渋沢さんも人間だったわ笑」と、ホッとしました。
夜と霧」でも「人間は、善と悪の合金である」とありましたが、これはどんな人にも当てはまると思っています。(もちろん、善と悪の割合は様々です)

だからこそ、「自分はこういうところがダメだ」と否定したり「昔こんなことをしてしまった」と悔いて悩み続けるのではなく、それはそれとして受け止めて「今の自分にできるベストを尽くす」ことが大切なのだと思います。

また、渋沢さんは子育てでもご苦労されたようです。
ご自身が光り輝く存在であると同時に子育てもする、ということが非常に非常に難しい、ということかもしれません。

人には得手不得手がある。
全てで輝くことはさっぱり諦めて、得意なフィールドで輝ければ、それだけで素晴らしいですよね。




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