埋火

灰に埋もれた火を
埋火と書いてうずみ、
うずみび、いけびと読む。

寒い朝、祖母が火鉢の
灰に埋めてあった
埋火を掘り起こしていた。

灰色の炭にぽっと
赤みがさしてきて
かざした手を温める。

子供のぼくには
火が消えていなかった
ことにとても驚いた。

暖をとらないのに
炭に火をつけておくと
燃え尽きてもったいない。

だから寝る前には
炭は灰に埋めておく。
火種を絶やさない。

美しくやさしく
暖かみのある炭火。
静かに仄かに燃える。

埋火や壁には客の影ぼうし 芭蕉

いつまでも炭火を
大切にしたい先人の知恵。
火鉢の埋火が懐かしい。