先輩のひと言
ぼくが若い頃。
会社が買収され、
先輩たちは
自分たちの会社を作った。
ぼくはフリーランスで
生きていくことにした。
先輩のひとりが言った。
「自分の価値は
金で決まると思え。
ギャラが安ければ、
お前の価値は低いと思え。
いくらいいこと言われても」
ぼくはこの言葉を肝に銘じた。
それは「瞞されるな」、
「人を安易に信じるな」、
「自分を信じろ」
「稼げる人間になれ」
「精進しろ」ということだった。
先輩はぼくのことを
アマちゃんと思っていた。
その通りだった。
のほほんと過ごしてきた
おぼっちゃんみたいなもの。
心配して言ってくれたのだ。
その後のぼくはどうだったろう。
人をよく思いたいぼくは
瞞されたこともあったけれど、
よくしてもらったことのほうが多い。
世話になった人ばかりだ。
人に恵まれてここまでやってきた。
ただ、ぼくは仕事では
いつもベストを尽くしてきた。
1年間でまるまる休んだ日が
3日しかなかったこともある。
がむしゃらに働いた。
それが本当によかったと思っている。