「真珠の耳飾りの少女」
「真珠の首飾りの少女」は
西洋の「見返り美人」だなと思った。
振り返りざまの少女の柔らかい表情、
つぶらな瞳と濡れたような唇、
白く輝く真珠のイヤリング。
若い頃から惹きつけられていた。
しかしこの絵には秘密があるようだ。
イタリアのグイド・レーニが描いた
「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」を
フェルメールがオマージュしていたという。
チェンチは非道な暴力の父を殺害したため、
斬首刑に処せられたがその前夜の彼女を描いた。
チェンチは「真珠の首飾りの少女」と同じく
頭にはターバンを巻いて振り向いているが、
髪で打たれる首が隠れることのないようにだ。
オランダではターバンを巻く習慣はなく、
「首飾りの少女」は処刑前を暗示している、
そう指摘する絵画評論家もいるのだ。
「首飾りの少女」の口元に浮かぶ笑みから
「北のモナリザ」と呼ばれる名作だが、
この絵のいわれを知ると恐ろしくなってしまう。
彼女が純真で憂いのかけらも見えない所が、
より恐ろしさを暗示しているように思える。
とてもミステリアスな絵だとも言えるのだ。