タイガーの復活
右足を粉砕骨折、
骨が飛び出していた。
4WD車のフロントは
無残なまでに潰れていた。
医師たちの懸命の手術で
切断の危機を免れた。
ボルトとロッドを挿入、
足首をギプスで固定した。
足は失わなかったが、
ゴルフは不可能に思われた。
しかしタイガーには
瀕死の交通事故から蘇生、
復活優勝を遂げた
ベン・ホーガンの勇姿が
頭に浮かび奮い立った。
車椅子を降り松葉杖で歩き出す。
ボールを打ちだしたとき、
世界中の人たちが驚愕した。
やがて息子や友人とラウンド、
タイガーの笑顔があった。
とうとう試合に出る日が来た。
命さえ危うかったのに、
第一線の復帰を決断した。
それがマスターズだった。
練習日から大勢のパトロンが
オーガスタに押し寄せた。
タイガーの胸筋は盛り上がり、
鍛え上げられた体つきは、
神々しいオーラに包まれていた。
足の状態は万全ではないが、
マスターズに出られる幸せに、
タイガーは満たされていた。
奇跡の復活劇は今始まったばかり。
優勝できなくても問題ない。
その勇姿はショットを放つたびに、
輝きを増し一等星の煌めきとなる。
ゴルフへの情熱は魂に火を灯し、
真っ赤な炎となって燃え盛り、
ギリシャ神話の太陽神となる。
人々を明るく照らすアポロンに。