ボードレールのあほうどり
昨日書きました「あほうどり」の詩をもっと知って欲しいと
シャルル・ボードレールの「あほうどり(L’Albatros)」を訳してみました。
あほうどりは飛翔する鳥の中では最大級とのこと。
大海原を、大空を、自由に飛び回る大きな白い海鳥。
人間が羽根を目的に捕獲し続けて日本では天然記念物、絶滅危惧種です。
そんなあほうどりに自分を重ね合わせたボードレール。
4節目に「Poëte」と詩人という単語が大文字になっています。
「詩人というものは」と強調したいボードレールの詩人としての誇り。
ぼくも詩人として、彼の心情を貴く感じます。
まずは原文、そして、拙訳です。
L'Albatros
Souvent, pour s'amuser, les hommes d'équipage
Prennent des albatros, vastes oiseaux des mers,
Qui suivent, indolents compagnons de voyage,
Le navire glissant sur les gouffres amers.
À peine les ont-ils déposés sur les planches,
Que ces rois de l'azur, maladroits et honteux,
Laissent piteusement leurs grandes ailes blanches
Comme des avirons traîner à côté d'eux.
Ce voyageur ailé, comme il est gauche et veule!
Lui, naguère si beau, qu'il est comique et laid!
L'un agace son bec avec un brûle-gueule,
L'autre mime, en boitant, l'infirme qui volait!
Le Poète est semblable au prince des nuées
Qui hante la tempête et se rit de l'archer;
Exilé sur le sol au milieu des huées,
Ses ailes de géant l'empêchent de marcher.
あほうどり
しばしば、船員たちは、自らが楽しむために、
海の大きな鳥、アホウドリをつかまえる。
アホウドリは船についてくる、旅の気楽な仲間、
厳しい深淵の海上を滑るように走る船とともに。
船員たちはアホウドリを甲板におくや否や、
その蒼穹の王様たちは不器用で恥じるように、
大きな白い翼を惨めたらしく引きずっている。
船の櫂のようにだらりと両脇に下げたまま。
翼をもったこの旅人、不器用でだらしがない!
少し前まで美しかったのに、なんて滑稽で醜いのか!
船員の一人は短いパイプで嘴をつつきまわし、
もう一人は飛ぶにはかたわでびっこをひく鳥の真似!
詩人という者は大きな雲の王者に似ている、
嵐にとりつき、弓の射手などものともしない。
罵声を浴びせられ、地上から追放されれば、
彼らの巨大な翼はその歩みを妨げるばかりだ。
(訳:本条寺京太郎)