高倉健の「駅」

高倉健の「駅 STAITION」は随分昔に見た。
いしだあゆみが列車に乗って高倉健と別れの時、
涙の笑顔で敬礼したシーンは美しかった。
倍賞千恵子が高倉健と一夜をともにし、
声がでかかったと心の中で呟くシーンに、
見ていた多くの人が笑ったのを思い出した。
映画館で見たのかもしれない。

それから何十年も経ってテレビで見た。
大して面白いと思わなかったこの映画が、
やけに胸に染みたのは歳を取ったからか。
高倉健の妹役の古手川祐子がかわいい。
殺人犯はセクシーな根津甚八、
その妹は烏丸せつこで彼氏は宇崎竜童。
高倉健は刑事で五輪代表の拳銃使い。

北海道の凍てつく雪と海、
飲み屋のおかみの倍賞千恵子と
高倉健の店での出会いは昭和の心。
テレビから八代亜紀の「舟歌」が流れる。
「あたしこの歌好きなの」と口ずさむ倍賞。
二人は心の隙間を埋めていく。
しかし切っても切れない男と女。
倍賞の男は凶悪犯、高倉が拳銃で仕留める。

警察に通報しながら男を匿っていた倍賞。
刑事に矛盾を突かれるが煙草をもらって言う。
「男と女だから」と、愛は理性を超える。
土地を離れる前に倍賞の店を訪ねる高倉健。
素っ気ない倍賞に「舟歌」が聞こえ、涙がこぼれる。
どこまでクサいのか、でもそのクサさが堪らない。
高倉健の苦み潰した顔や時折の笑顔が、
すべてのシーンをかけがえのないものに変えてしまう。
降旗康男監督、木村大作撮影の東宝映画。
最後のテロップまでしっかりと見てしまった。