阪田知樹と日本フィルのプロコフィエフ_2023年6月9日
昨夜、日本フィルハーモニー交響楽団の「第751回東京定期演奏会」に行ってきました。
指揮は大植英次さん。ピアノは阪田知樹さん。
阪田さんのピアノはもともと好きで、自分の誕生日に土砂降りの川崎まで聴きに行ったほどです。今日も日帰り出張だったのですが、迷わずかけつけました。
要するに、聴く前から「素晴らしいだろう」とおおよそ検討はついていたのです。
しかし、今日のプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番 ト短調 op.16」での音は、別格に感じました。
鳴った瞬間というか、指が鍵盤に触れるか触れないかの瞬間から音楽が爆ぜて、ホールを震わせたように感じたのです。
音が広がっていく感触は、滾々と湧きあふれる泉のようであり、風にたなびく繊細な羽衣のようにも見えました。
そしてそれらは、消える瞬間まで透明な輪郭を持っていました。
聴くというよりも、音による空気の震えの中に全身が飲み込まれているような感覚で、その素晴らしさに鳥肌が立ち、涙が溢れました。
オケの演奏も、音がピアノを囲むように立体的に立ち上がっていく様が見えるようでした。
そして、阪田さんのピアノを支えるヴァイオリンのハーモニクスは、耳に届くか届かないかの繊細なピアニッシモでありながら、倍音の響きが確かに肌に伝わって、鳴っていない所の音の饒舌さに魅了されました。
この”鳴っていない所の音の饒舌さ”は、チャイコフスキー「交響曲第6番《悲愴》 ロ短調 op.74」でも同様でした。
舞曲の流れに思わず踊り出したくなる「第2楽章のスケルツォ」や、バレエのような華やかな楽想が春を思わせる「第3楽章」を経て、慟哭のような「第4楽章」ーー。
大植さんが指揮棒を下ろしてからもしばらくホールの空気が色濃く張りつめていて、ふと彼の肩の力が抜けた瞬間、客席からため息が漏れたほどでした。
今日は隣りのブルーローズ(小ホール)で「葵トリオ」の演奏会が開かれていたこともあり、会場には芳香を放つ青いバラが!
ガマンできずに顔を近づけて存分に深呼吸をしてしまいました。
今年は桜こそ見ることはできたものの、藤棚にもバラ園にも行けないままクチナシの季節を迎えたので、とても幸せでした。
今週は3日連続で演奏会に行きます。とても楽しみです。
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