好きが当たり前だった人
とても大切な人がいる。
もう関わることはないけれど、大切なのは、きっと今も変わらない。
彼はわたしのことを初めから好いていた。
サークルで1年の冬に出会って、春にはなんでも喋ってた。
いつもわたしのことを見ていて、いつもわたしの隣にいて、いつもわたしと笑ってた。
私達にしか分からない話を沢山したし、私達にしか分からない気持ちをお互い理解していた。
気がする。
彼がわたしを好きなのは当たり前で、わたしの隣にいるのも、わたしを好きだと言うのも、誰よりもわたしのことを知っている風でいるのも、いつもわたしの電話に出ることも、酔うと直ぐにわたしに会いたがることも。
お互いが欲していて、彼女とか彼氏とか、友達とか、家族とか。そーゆーのとはまた違う。
新たな存在が創り出されていたように思う。
でも、あの頃は彼の考えていることはわからず、彼の言った言葉の意味も理解しておらず、彼の行動の意味することも考えてもいなかった。
毎日が思い出になるような日々で、いっぱいいっぱいだった。
いま、もう親しく話すこともなく、待ち合わせして会うこともない今だから、ゆっくりと分かってきた。
あの時の彼の優しさとか、あの時の彼の焦りとか不安。努力とか、嫉妬とか、好意とか、心配とか。
その全部が愛おしさで、優しさで溢れていたことに、少しずつ気づいた。
彼がわたしを好きだから、私は彼を好き。
そんな簡単で単純な好きではいられなくなった。
彼にとっての今のわたしが、通行人Aと同じ役柄だとしても、わたしにとっては忘れられないあの人。
大切な人。友達以上、恋人以上、家族未満で以上。
そんな新しい存在になってしまっている。
わたしを傷つけても、彼には傷つかないでほしい。誰も彼を傷つけないでほしい。
誰か彼を褒めて欲しい、守ってあげてほしい、救ってあげてほしい。無理させないでほしい。
もうそれができるのはわたしではないから、祈っても仕方ないのに、祈るだけ。