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気まぐれなアメリカのデザイントレンド解説:"Dear Data" 日常をデータで描き、ポストカードで贈る

先月、とある本に恋に落ちました。

きっかけは、とあるテック系企業の理念のアップデートに伴い、デザインを一新するプロジェクトに入った時のこと。当時私は初めてのことだらけで、プロフェッショナルと学生との間の深い溝を感じていました。それを相談したときに、何かのヒントになれば、と上司から手渡された本です。

その本のタイトルは、”Dear Data”
著者は、2人。
1人はニューヨークでPentagramという世界最大のデザインエージェンシーの顧問となっている、イタリア人女性・Giorgia。

もう1人はロンドンでデータを取り扱ったグラフィックデザインを数多く作っており、数多くの美術館で作品が展示されている、アメリカ人女性・Stefanie。

同い年で、女性で、世界に名を馳せるインフォメーションデザイナー(データのデザインを行う人)で、データとデザインを愛する2人。その2人が1年間、毎週テーマを決めて、データを取り、それを思い思いの形で描いて交換し続けた52枚のポストカードが1冊の本になっています。

スマホを触った時間。
人に「ありがとう」と言った回数。
聞こえてきた物音。
自分が思う、近所の地図。
箪笥の中の自分の服。そのうち、実際によく着る服。

誰にとっても身近な行動の数々が1週間データとして集められて、それを絵のように表現しています。1年間52週間すべてが違う形だし、その1枚1枚よく見てみると「ああこの時は喧嘩したんだな」「ここはいいことがあったんだな」と、2人の心の動きも読み取れてきます。何より、世界的なデザイナーであり、多忙であろう2人がこうやって1年間毎週休まず作品を作り、積み重ねていたことにすごく感動しました。

この本を手渡される時に、上司から「表現したいものを直接的に絵として(=graphically)表現しなくていいんだよ。写真の対象物の形かもしれないし、イラストかもしれない。もっとコンセプトを表現することを考えてみて。」と言われていて、最初はその意味がわかるようでわからなくて、悶々としていたのですが、テクノロジーやデータの概念をグラフやデータを表すピクセルで表現しようとしていた私には、「こんな表現があるんだ」と目から鱗が落ちるような経験でした。

前職の仕事柄、課題を聞いたら、「こういう方向に持っていけばいい」とコンセプトや方向性を考えるのは得意なのですが、それを形にするのに苦戦しています。ただ、世界のどこにいても、とにかくたくさんいろんな表現に触れること、なるべく違うバックグラウンドの人の世界に触れることができるのは、すごく恵まれた環境だなと思っています。

この本に収められている作品は、MoMAの展示でも見れるので、ニューヨークにいらっしゃった際はぜひ。

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