舞妓を目指してるの?おしろいの塩サウナ事件〜東上野 寿湯〜【サウナリーマン日記第34話】
「えっ冷たっ」
もう気がついた時には引きかえせない。
身体を清めて自信満々でつかったのに。
ここは下町を代表する銭湯サウナ。
東上野、寿湯さん。
住宅街にそびえ立つ、趣のある
銭湯である。
上野で前職の仲間とジンギスカンを
囲む約束があったため、サウナ飯も
見据え、コンディションを整える必要
があった。
じっくり身体を清めて露天風呂へ。
調査不足は否めなかった。
それは認める。
たしかに露天風呂は2つあった。
私はサウナ前に露天風呂を楽しみたい
と思い、勢いよく
手前の風呂に飛び込んでしまった。
水風呂とも知らずに。
いやーこんな見た目だったから、
しっかりあったまる気まんまんだった。
このギャップを想像してみてほしい。
目の前のととのいイス腰掛けた
おじさんは不思議そうな表情をしていたが、
もう後戻りはできない。
ちっぽけなサウナーのプライドである。
幸い少しぬるめだったこともあり、
何食わぬ顔で脱出。
とりあえず全体の導線の確保が優先だ。
昼間から開店しているということもあるのか、
お客様は適度な混み具合でじっくり
蒸され散らかすことができそうだ。
室内はバイブラが効いてる浴槽と、
ブルーミントたる高温の浴槽。
水風呂とのギャップもあったのか、
後者は激アツであった。
43℃ぐらいあったのではないだろうか。
まずは遠赤外線のドライサウナへ。
8人でぎゅうぎゅうのスペース。
ストーブのスペックとスペースの
バランスが抜群であっという間に
蒸される。
これで万全の準備体制で
露天の水風呂を楽しむ。
そして露天の奥の
塩サウナへ。
そこで事件が待っていた。
中に入ると、意外に20代前半の若者が
5,6人いるように思えた。
スペース的に全体で定員は8名ぐらいだろう。
塩サウナは初めてじゃない。
それなりにお作法は心得ているつもりだ。
中心にそびえ立つ塩が盛られた
バケツ。
なんら珍しいことではない。
他の施設で見慣れた塩のバケツを
見つめながら、あらかじめ設置されて
いたビート板に腰掛ける。
ここまでは何とも思わなかった。
いや気づいていなかった。
たまたま流れていた、阪神対巨人戦。
そのテレビを見るついでに
全体をさりげなく見回す。
「ん」
「んん」
「んんん」
言葉には出していなかったと思う。
でも私の表情はきっと驚きを
隠せていなかった。
だってみんな顔が白い。
真っ白だ。
大の大人の男子が、
本当におかめ納豆のキャラクター状態。
塩じゃない。
違う。
違うんだ。
違う♪違う♪違う♪
そうじゃなぁーい♪
鈴木雅之が頭の中で歌い始めて
しまった。許してくれ。
ここまで読んでいただいたあなた。
やっと分かったんだ。
塩を顔に塗っているのではなかった。
明らかにクリーム状のもの。
男子達の顔は真っ白である。
そこにデフォルトのオッさんただ1人である。
それは私である。
もうパニックである。
明らかに塩を顔に塗りたくっている
わけではない。
誰かが何かを持ち込んだのか。
もうあれこれ考えても仕方ない。
私は再びテレビに視線を移す。
すると、今の若者とは別に新しく
入室したおじさんがいた。
同じく顔は真っ白だ。
私は本当に「世にも奇妙な物語」
の主人公になってしまったのか。
そんな狐につままれたリアクションを
していたのが、ばれてしまったのか。
そのうちの
若者の1人がこっそりニヤっとして
私の死角になっていた場所にある
泥パックのボトルをチラッと見せた。
そんなのあったんかい。
心の中で精一杯のツッコミをしたのは
言うまでもない。
このタイミングで知ってしまった以上、
いまさらパックを塗る気にはなれず、
親切な青年に御礼の視線を送り、
塩サウナ室を出た。
その横にある洞窟の水風呂へ。
監視カメラが気になる位置にあったが、
当然ながらしっかり汗を流す。
少しぬるめが今日は心地よい。
最後はハイビスカスの露天風呂へ。
マンションに囲まれた和のスペースが
落ち着きます。
小雨のぱらつく中、じっくり浸かる。
「東京にもあったんだ」
思わずつぶやいてみたくなった。
また1ヶ月に一度は温泉を取り寄せても
いるみたいで、リピーターを楽しませる
工夫が随所に見られた。
また来てみたい、下町銭湯の
定番になりそう。
寿湯よ、ありがとう。
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