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能登地方の冬の風物詩、かぶら寿司:歴史と文化を紐解く

能登地方の冬の風物詩、かぶら寿司:歴史と文化を紐解く

能登半島の冬の訪れを告げるかのように、食卓に彩りを添えるのが「かぶら寿司」です。その歴史は古く、江戸時代から受け継がれてきた郷土料理であり、能登の人々の暮らしに深く根ざしています。

かぶら寿司の起源は定かではありませんが、少なくとも江戸時代中期にはその原型が存在していたと考えられています。加賀藩料理人の記録には、「塩鰤の鮓」として、塩漬けのブリ、大根、かぶらを用いる記述が見られます。このことから、かぶら寿司は、身分の高い武士が食した高級料理であったことが伺えます。

庶民がブリを味わう機会は限られており、高価なブリを隠して食べるためにかぶらで挟んだという説も存在します。また、北陸の厳しい冬を乗り越えるための保存食として作られたという説も根強く残っています。冬は漁が難しく、貴重なタンパク源であるブリを、かぶらと麹を使って発酵させることで長期保存が可能となり、食料の不足を補う役割を果たしました。

かぶら寿司が広く知られるようになったのは、江戸時代後期以降です。魚屋や八百屋が年末、得意先に手土産としてかぶら寿司を手渡すようになったことがきっかけとなり、年始の挨拶として贈答品としても定着しました。

かぶら寿司の特徴

かぶら寿司は、輪切りにしたかぶらの上に鰤の切り身を乗せ、麹に漬け込んで発酵させたものです。かぶらの爽やかな風味と、鰤の濃厚な旨みが麹の甘みと酸味と絶妙に調和し、独特の風味を生み出します。能登地方では、地元産の青かぶらと脂の乗った寒ブリを使用することが一般的です。

かぶら寿司の文化

かぶら寿司は、単なる食べ物にとどまらず、能登の人々の文化や歴史を象徴する存在です。正月や祝い事の席には欠かせないものであり、家族や親戚が集まり、一緒にかぶら寿司を囲む光景は、今もなお人々の心に温かい記憶として残っています。

近年では、かぶら寿司は能登を代表する特産品として、全国的に知られるようになりました。多くの観光客が能登を訪れる際には、必ずと言っていいほどかぶら寿司を味わいたいと願います。

まとめ

かぶら寿司は、能登地方の風土と人々の暮らしの中で育まれた、歴史と伝統ある郷土料理です。その奥深い味わいは、多くの人々を魅了し続けています。かぶら寿司を食べることは、単に美味しいものを味わうだけでなく、能登の歴史と文化に触れる貴重な体験と言えるでしょう。


ladymoco

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