【インドネシア教育ツアー】番外編2 SDHについてまとめました!
日本人にとって発展途上国、貧しい国、といったイメージが強いインドネシア。僕が20年前にジャワ島を2週間旅したときにも、「教育も治安も宿生面も多くの課題を抱えた国だ」、と思った記憶があります。ところが現在は大発展中。人口も2億7000万人に近づき、世界第4位。新型コロナウィルスの影響を受けながらも世界銀行が上位中所得国に引き上げを行いました。
しかも人口の90%がイスラーム教徒。イスラーム数の発展はめざましく、近々世界最大の宗教となるであろうと言われています。インドネシアが今後発展するイスラームビジネスの中核をなしていくことは間違いないのではないでしょうか。
ちなみに平均年齢が約29歳のインドネシア(話題になるZ世代(10歳から25歳)は人口の30%近くを占めいています。)では、将来を背負う子どもたちの教育に政府も力を入れており、国家予算の20%を教育関連に配分。一方、「教育は将来への投資」と考える親が多く、できるだけ良い学校に進学することが競争社会を生き抜く術と考えているのです。
2018年 インドネシア教育視察に一人で行ってみた
2017年、大学院時代の友人家族と日本で再会しました。彼らはインドネシアからの留学生でした。留学生同士で夫婦となり、インドネシアで生活をしています。そんな彼らの言葉に大変驚きました。
「インドネシアの教育はとても良くなった。今までは結果を追い求める教育で、点数を取ることが目的の学校が多かった。でも最近は学びのプロセスを大切にしている学校が増えて来ている。自分たちの子どもたちもこのような学校に通っているよ。」
実際に見てみたい!と2018年、静岡県のグローバル人材育成事業に応募し、インドネシアの教育視察に県費でいけることになりました。
そこで夏休み中にジャワ島の学校を一人で7校視察するという活動を行いました。このときの最大の目的がSDH(スコラディアンハラパン)というインドネシア人の友人のお子さんたちが通う私立学校の視察です。
2018年に視察した際のSDHに感じたポイントは
実際に見てみたら、この学校はすごい!と感動しました。
日本のはるか先を行っている!
SDHのすごさは、インターナショナルスクールではなく、国のカリキュラムに準じているのに、まるで世界の最先端を行っているように思われること。
教育のポイントは、キリスト教的な教育を柱にしながら派生した三つのこと。
・知識の習得
・技術、スキルの習得
・態度や振る舞い
具体的にはアクティブラーニングや探究学習を行います。知識だけではなく、「どのように行動できるか?」がポイント。教師の問いから始まり、自ら疑問を持って、問題を解決していく。そこにはペーパーテストの定期試験はありません。自分たちで与えられた課題のテキストを作り、プレゼンをする。この活動は教科横断的に行われます。
高校の卒業試験はミュージカルドラマをつくること、このミュージカルは一般公開され、チケットも取売します。親にもチケットを買わせて入場させる徹底ぶり。
シナリオを作り(国語)、舞合の大道具、小道具をつくり(美術)、ポスターの制作などを通してどのように集客するかを考えます(経営)。これをルーブリックに基づいて数員が評価。
写真にある「雪女」のポスターも生徒の作品。(注、日本の雪女の物語のポスターを生徒が制作していた)。しかも一人も日本人がいなく、日本語もできる生徒はいない。それでも日本語のポスターを制作できてしまう、問題解決能力に感動しました。しかし一番驚いたのはこのようなすごい教育を可能にする先生のスキルがすごい!
毎年、新学期前に全教員が財団がもつ大学(UPH)で研修。それ以外にも財団の各学校(50校程度)の代表が一同に会して研修を行い、その成果を学校に持ち帰り、また研修。さらには各学校独自の教員トレーニングも頻繁に行われること。このようなシステムが作られていることにもおどろきました。そして研修→授業で実践→検証、というサイクルを5年間繰り返し(2018年当時)、形をつくりあげた努力にも感動です。
また「評価」に対する教員の徹底ぶりにもおどろきました。複数の科目が融合した授業を行う。そして試験に複数の教員が参加し、ルーブリックに基づいて採点を行う。
もう一つのポイントはこの学校はあくまでもインターナショナルスクールではなく、国のカリキュラムに乗っ取った学校だということ。国が課している知識の習得もおろそかにしていません。その一方で国の要求する「知識」の部分に対しても定期テストは行われません。ここが驚くポイントです。
丁寧な学習過程の指導と、保護者と本人・教員との細かな連携、ルーブリックやポートフォリオの活用、そして何よりも手厚い職員研修と実習で得た知見を検証する場があたえられていること、これがSDHの世界レベルのすごさだと心の底からおもいました。
SDHのような私立学校のみならず、地方の国立高校(日本でいう県立高校のような普通の公立高校)でもSTEAM教育やPBL(プロジェクト型学習)を柱にしている学校があることも驚きの事実です。
2020年3月13日、インドネシア人の友人からの連絡が来た!
2018年の視察の際にお世話になったインドネシアのアイリンからWhatsAppで連絡が来ました。
WhatsAppとは世界的に使われているメッセージアプリです。アイリンのお子さん通うSDHがコロナで休校になったとのこと。流行が遅かったインドネシアでもとうとう3月には日本と同じ状況になってきました。
<WhatsAppでの会話>
アイリン
「英語のテストが予定されていたけど、(休校で)e-learningになったため、生徒が各自でプレゼンのビデオを撮影し、先生にメールをするそうです。」
僕:「オンラインミーティングではなく、メールなんだね。メールは普通のeメール?」
アイリン:「オンラインミーティングは今はしていないです。(注 以前この学校の生徒とうちの学校の生徒とZoomで繋ぎオンラインミーティングをしたことがある。その後すぐSDHでもオンラインミーティングを実施した。)学校はOffice365を使用しているので、学生たちは全員学校からメールアドレスをもらっています。」
僕:(発展途上国なのにマジでOffice365を入れてるのっ)心の声
アイリン:「あ、もっと詳しく聞くとEdmodo(アメリカ発のLMS。当時の日本でも一部の教員に使用されていた。)を使うそうです!」
僕:「(ギャフン!)すごいね!普通にそういうの使っちゃうんだね!」
インドネシアの地方の私立学校なのに、MicrosoftのOrfce365を使い。Edmodoを使う。まるで日本の先生方が休校中にチャレンジしようとして苦労したことをさらっとやっている!e-learningをさらっとやってしまうインドネシアの田舎の私立、SDH(ディアンハラバン・チカラン校)。さすがです!
このメッセージのやり取りの背景には、実は2020年3月中旬にインドネシアに行き、インドネシアの学校訪問をして交流する計画をしていたことにあります。2月末段階ではインドネシアの新型コロナウィルスの発症数はゼロ。しかし2月末にはSDHは生徒・保護者に次のような通達を出していました。「中国や新型コロナウィルスが流行っている国から来た、もしくは帰ってきた者、生徒、両親、親族、教員は、14日の間、学校に立ち寄らないようにしてください。」
対応が素早い・・・。SDHの先生と連絡をとると、学校訪問は様子をみて決めたいとのこと。その後、3月19日から日本を出発する予定でしたが、SDHはあっという間に3月16日(月)から休校。
インドネシア国内の発症者が出だしたとはいえ、学校があるチカランには発症者がいないのに休校、という決断の早さには驚きました。そして僕もインドネシア訪問をあきらめました。
SDHの具休的な休校対策は以下の通り。
3月16日 時間開通りE-learningスタート。
朝の7:00の礼拝からスタートし、15:20まで通常通りのスケジュール。10コマをこなします。
Office365とEdmodoを使って課題を指示。
生徒は動画や画像、テキストで返信。
音楽は歌を歌い動画で学校に提出。
具体的にはOne note、One drive、Edmodo、動画配信などで来ます。
インドネシアのお菓子について調べて発表するといった調べ学習もあります。
(中1) 美術の課題はバティック(インドネシアの民歩衣装)をテーマにバティックの模様を紙で制作します。画像にして提出。
必要に応じて双方向のテレビ会議のオンライン授業も。
SDHのInstagramに休校時の家庭での学びの様子があげられていました。
英語はタブレットなどを使ってプレゼン動画をとり、提出。
幼稚園から小学校までは全て英語を使って授業をうけているので、レベルは非常に高いです。
(2020年時点は)卒業のための統一国家試験があるため(現在は廃止)、中高はインドネシア語で授業を行っていました。
(注 2020年時点は小学校も卒業試験があった。小六、中3、高3の2学期は卒業試験のためだけに勉強していた。この時間が無駄であると政府が判断し、現在では廃止。2020年時点は卒業試験がありPCで全国同時実施(ペーパーテスト型の知識を問う間題、プロジェクト学習の論文、ポートフォリオ。論文はルーブリックで採点)
3月16日から始まったSDHの休校。インドネシア全土の学校が続いて休校に入ると、なんとその後約2年(23か月)もの間休校が続くことになりました。
ちなみにこのようなSDHの素早くシステマチックな休校対策の様子を聞いていたため、前任校の掛川西高校の休校対策のモデルとして活用することができました。(公立時代に勤務していた掛川西高校は、2020年4月からすべての授業を時間割通り動画配信した。)
2023年度、SDHを5年ぶりに訪問して得たSDHの休校対策についての知見についてはこちらを参照↓
そして4月12日。インドネシアは、休校の長期化に伴ってよりさらに進化していきました。テレビチャンネルであるTVRI Nationalと提携して教育省が学習動画配信をスタート。
幼稚園から小学校6年までの内容を毎日8時から11時30分の間に放送されています。各学年30分だけですが、プロの作る教材で学習をしています。これはインドネシアの教育格差、環境格差が大きいため。田舎の学校はオンラインをやる環境にないため、数師が家庭訪問しているところもあるそう。こうした地方の学校向けのテレビ放送なのでしょう。
インドネシアのテレビで学びを進める方法は振り返ると日本も本来十分できた対応でした。
日本にはNHK教育があり、ほぼすべての家庭にテレビがあります。またNHK教育にはNHK高校講座をはじめ、多くのコンテンツもすでに持っていました。このようなコンテンツを計画的にNHK教育で配信し続ければ十分に日本中で学びを進められたと思っています。
ただこの方法をなぜ政治家やマスコミ、NHKがやろうと言わなかったのか?
日本という国の「教育」に対する意識(優先順位)の低さがあらわれているように思います。
しかし一番重要な点は、我々教員自身、学校自身が自分たちの「教育分野」を他に侵されたくなかったのかもしれません。
この点は今だからこそしっかりと振り返り、反省すべき点だと思います。
話は当時のインドネシアに戻ります。
多くの学校は宿題をWhatsAppやGoogleClassroomで送ったり教育内容を送ったり、回収したりしていました。当然軽済格差が大きい、インドネシアでは使用するデータ量が問題となりました。
そのため、教育省は2020年9月から12月、学生のためにSIMカードを配布しました。
1ヶ月に使用できるデータ
幼稚園児 20GB
小中高生 30GB
幼稚園小中高教員 42GB
大学生・大学教員 50 GB
※それぞれの容量から5GBは一般のデータ通信に使用できる。残りは決められた教育用のサイトにしか使用できない。
使用できる教育用のサイトは、学校のE-learningサイト(GoogleClassroomなど)や教育省のサイト、大学のサイトなど173サイトが該当。
ちなみにインドネシア全体の教育の方向性は?
高校の国定の卒業試験(現在は廃止)にプロジェクト型学習が義務付けられているので、すべての学校でPBL(プロジェクト型学習)が行われています。そして卒業試験や大学入試は全国一試験をPCで行っています。(ほぼすべての学校でICTの活用が可能)、また新しい大臣がすべての学校をSDHのような教育にするように教育改革を行っています。その大臣はナディム・マカリム氏。
「1984年生まれのナディム氏は米ハーバード大学経営大学院で 経営学修士号(MBA)を取得後、2010年にゴジェックを創業した。配車・ライドシェアから、これらを利用した配送サービス、料理の出前サービス、それに電子決済サービスなどを相次ぎ展開し、ナディム氏は創業から10年もたたずしてゴジェックを世界有数のスタートアップに育てた。その評価額は100万ドル(約1兆900億円)と、世界で20社前後しかないデカコーン(評価額100億ドル以上の未上場企業)の一角を占める。」(日軽ビジネスHPより)
彼はGojecの開発者です。
Gojecとは、インドネシア版のUberのようなもの。
今回の2023年の旅でもインドネシアのいたるところで目撃しました。
「ゴジェックのライドシェア・配車サービスには200万人余りのドライバーが登録し、アプリのダウンロード数は1億3000万回を超える。公共交通機関が未発達のインドネシアにおいて、既にゴジェックは「国民の足」として定着している。さらに同社が手掛ける決済サーピス「ゴーペイ」は銀行口座を持たない人々にも現金に代わる新しい決済手段を提供した。その利用者の数は約1000万人に上ると言われる。「ゴジェックは(規模、影響力ともに大きくない) 日本のスタートアップ企業の目線ではもはや捉えられない。人々の生活を支える大インフラ起業とみるべきだ」(日経ビジネスHPより)
ハーバードを出身30代のやりてITビジネスマンが、教育改革に本格的に乗り出しています。
「ナディム氏は早速、5千万人の児童・生徒を対象に、IT(情報技街)数育などを充実させる考えを示した。ジョコ氏は「産業で役立つ人材育成の突破口を作ってほしい」として、教育機関と産業界の懸け橋としての役割も期待するとした。・・・ナディム氏は23日、従業員にあてた電子メールで、ゴジェックが配車などで人々の生活を改善してきたことに触れ、「インドネシアが(ゴジェックにいるような)高度な人材をもっと生み出すためには教育システムを変える必要がある」と入閣の理由を近べた。」(日本済新聞より)
日本紙済新間はさらに次のように指摘します。
「インドネシアの労働人口のうち、最終学歴が小学校卒以下の人が約4割で、中学校卒以下も合わせれば約6割に達する。産業界からは「即戦力として使える人材が少ない」(日系企業)といった不満が出ていて、海外からの投資が周辺国に流れる一因となっている。」
しかしこのような視点は、特に今(2023年)となっては日本からの上から目線と感じざるを得ません。
この2020年のメッセージからは、現地の友人の教育改革へのあふれる期待感を感じます。そしてこの改革への熱量は現状の不安を振るい払うものに感じました。
日本がいつまでもインドネシアを目下の発展途上国だと思い続けるならば、アフター・コロナの世界情勢を見誤ることになるのではないか、と思っています。
SDHとはどのような学校なのか〜 組織編
話をSDHに戻しましょう。
SDHの強みは何といっても組織力。財団全体で決定している教育に対するビジョンが明確なこと。そしてビジョンを実行する組織がしっかりとしていて、ビジョンを実行するための研修もきちんとプログラムされていること。
パンデミックのような緊急時代だからこそ、このようなぶれないビジョンや組織力が大きな成果を生んできたと思います。
また財団全体でいち早く世界の教育のトレンドを把握し、インドネシア流にアレンジ・実施してきたこと。少なくとも2008年よりも早くにPBL(プロジェクト型学習)を導入したり、教科横断型の学習、ルーブリックによる評価などを他校に先駆けて行ってきました。(コロナ前の2018年に視察した段階ですでに実施・確立されていました。)この方針を政府が後追いする形になったため、SDHの教育のすごさが際立った感じがします。
まずはSDHや財団の成り立ちから
SDH (スコラ ディアン ハラパンチカラン)はYayasan Pendidikan Pelita Harapan財団(ヤヤサンペンディディカンペリタハラパン)(昭称YPPH) のグループ校です。このYPPHは、教育水準の向上とキリスト教教育を行うために二人のビジネスマンが作った学校法人です。ペリタ・ハラパン大学(私立大学)を中心に60以上の学校(2023年現在)を経営しています。
この2人の創設者が1993年に作ったのがYPPH財団です。彼らはインドネシアの子どもたちのために、キリスト数主義で、質の高い教育が受けられる3つの異なる層の学校を作ろうとしました。
系列の学校は以下の通り。
・UPH(ペリタ ハラパン大学):文系理系併せて12学部。
ペリタ ハラパン教育財団 (YPPH) によって 1994 年に設立されたペリタ ハラパン大学は、教育の分野に力を入れています。この取り組みは、プロの経営陣、質の高い教員とカリキュラム、優秀な学生や経済的援助を必要とする学生への奨学金に反映されています。
「私たちのビジョンは、あなたの人生を変えるキリスト中心の教育を提供することです。神学と宗教、哲学、言語とライフスキルなどの授業では、神学的考察、批判的思考、言語能力、市民意識を身につけることができます。
私たちが提供したいのは、知識、スキル、就職準備以上のものです。私たちは、神学的考察、批判的思考、言語能力、市民意識などの主要な教育分野で強固な基礎を提供することにより、学生が成熟し、明確に表現でき、思慮深く、探求心があり、崇拝心があり、奉仕の心を持った大人になれるよう支援します。これらはすべて、生徒を真に変える総合的な教育を提供するという UPH のビジョンに沿ったものです。」(サイトから引用)
リッポヴィレッジ・キャンパス以外にも、メダンキャンパス、スラバヤキャンパスもあります。
財団・大学の下で以下の学校が運営されています。
・SPH (スコラ・ペリタ・ハラパン)通称はエス・ペー・ハー。2023年現在国内に5枚。1993年にリッポ村に作られて以降、5つのインターナショナルスクールが運営されています。
日本語サイトはこちら↓
https://lifenesia.com/?p=40209
これらはジャカルタ都市圏にあり、エリート層に対して、英語を中心言語とした国際基準に基づいた最高レベルの数育を提供しています。幼稚園から高校3年生まで。数日は外国人とインドネシア人の半々で構成されており、国際バカロレア(IB) とケンブリッジを組み合わせたカリキュラムを行っています。
「スコラ・ペリタ・ハラパン(SPH)は、1993年に設立された5つのキリスト教国際学校グループです。30年間で、SPHはジャカルタとボゴール地域に広がり、リッポ・ビレッジ、センチュル・シティ、リッポ・チカラン、ケマン・ビレッジ、そしてプルイト・ビレッジに校舎を構えています。
30を超える異なる国籍を持つ多様な生徒たちと3000人以上の卒業生を抱え、SPHは強固なキリスト教的基盤に基づく包括的な学習アプローチを求める国際志向を持った学生と家族にとって理想的な場所です。
卓越した学術プログラム、教職員、コミュニティに加えて、SPHはスポーツ、芸術、音楽、リーダーシップやパブリックスピーキングなど特定のスキルを磨く生徒主導のクラブなど課外活動を通じて、生徒たちの情熱や才能をサポートすることを目的としています。」(サイトから引用)
国際基準を満たす学校であるスコラ・ペリタ・ハラパン(SPH)では、英語を主要な教育言語として使用しています。英語の理解力だけが生徒の成功を決定するわけではありませんが、学校生活の中で必要不可欠な言語です。英語のサポートが必要な生徒に対して、学年に応じた英語学習プログラム(ELL)を提供しており、言語能力向上の支援をしています。
30年以上の歴史を持つSPHは、世界中のトップ大学でさまざまな分野を追求する学生を送り出しています。
「SPHでの学習の中で、授業内外、課外活動、コミュニティ活動、ミッションサービスラーニング(MSL)の機会、キャリアカウンセラーとの数時間にわたる相談セッションを通じて、学生たちは自分の才能と情熱を探求・発展させることができます。卒業生たちは、STEAM、ビジネス、法律、政治、経済、音楽、芸術などの専攻を選んで、自分の力を発揮する準備ができています。」(サイトから引用)
日本人保護者のコメント動画↓
・SDH(スコラ・ディアン・ハラパン)
「SDH は、ペリタ ハラパン教育財団傘下のキリスト教学校のネットワークであり、幼稚園から高等学校までの教育を提供しています。1995 年にリッポ村でスタートした SDH は現在、インドネシア全土に 15 のキャンパスを持ち、約 13,000 人の学生が学んでいます。私たちの創設者は、3 つの異なる段階の学校でインドネシアの子供たちに質の高い教育を提供することを構想しました。私たちの創設者の夢は、インドネシア全土に国際型の学校であるセコーラ ペリタ ハラパンを 10校、国立型の学校であるセコーラ ディアン ハラパンを 100 校、補助金付きの学校であるセコーラ レンテラ ハラパンを 1,000 校設立することでした。
SDHは、充実したカリキュラムに基づいて総合的な変革教育を提供するキリスト教学校で、生徒を世界の変革者に育てることを目指しています。「ディアン」という言葉は「光を発する装置」を意味し、ディアン・ハラパン学校がインドネシアの教育の未来に希望と光の源となることを構想しています。現在、さまざまな場所に 15 の SDH ユニットが確立されています。
SDH リッポ村、タンゲラン (1995)
SDH リッポ チカラン、ブカシ (2002)
SDH マカッサル (2003)
SDH ダーン モゴット、西ジャカルタ (2005)
SDH ラノタナ、マナド (2011)
セコーラ パレンバン ハラパン (2012)
SDH オランダ ビレッジ、マナド (2016)
SDH クパン (2016)
SDH バンカ (2016)
SDH ルブクリンガウ (2017)
SDH メダン (2017)
SDH ボゴール (2017)
SDH ジェンベル (2019)
SDH ジャンビ (2022)
SDH アンボン (2023)」(サイトから引用)
21世紀のスキル
これから起こる未知なることに対抗するために準備をする。
「SDH は、学生たちが現在 21 世紀の時代に生きており、自分たちの使命を果たし、人生の課題に直面するためにいくつかのスキルを身に付ける必要があることを認識しています。
コミュニケーションスキル
協力的
批判的思考と問題解決
創造性」(サイトから引用)
いのちのための教育とシャローム
「私たちは敬虔な性格は聖霊から得られるものであると信じています
ディアン・ハラパン・スクールは、学校での学習活動を通じて、生徒たちが敬虔な性格とキリストへの信仰を反映する機会を喜んで提供します。私たちは、敬虔な性格は聖霊の実であると信じています。学生は、自分たちの価値観、文化、性格を構築するためのモデルと文化を学び、取得する必要があります。教師は、文化と敬虔な人格の確立が容易に成長する場所での学習を意図的に計画する必要があります。したがって、ディアン・ハラパン学校の教育は、生徒たちが自分の人生と将来だけでなく永遠に備えて生きることを訓練し、神の前でどのように生きるかをより大切に、より大きく生徒たちに備えさせる教育であると言えます。そして神の呼びかけに応えてください。」(サイトから引用)
特徴
2023年現在国内に15校あるSDHは経済的にはミドルクラスの層が通う学校です。幼稚園から高校3年生まで。英語とインドネシア語の両方が使われています。インドネシアの国が指定したカリキュラムと学校独自のカリキュラムを併用しているところが特徴です。
・SLH (スコラ・レンテラ・ハラパン):2023年現在国内に27校。幼稚園から高校3年生まで。下層階級のために作られた学校です。現在全国で1万名近い生徒が通っています。カリキュラムはインドネシア政府が指定したカリキュラム。使用音面はインドネシア語のみ。
これらの学校はYPPH財団のもとで、目標校数に向かって毎年増設されています。
SDHとはどのような学校なのか〜カリキュラム編
ルーブリック評価を使った教科横断型のPBL(プロジェクト型学習)を、コロナ休校のはるか前から行っていたSDH。
このパンデミックでカリキュラムの変更をする必要はありませんでした。
一方、ナディム大臣率いる教育省はパンデミックを機に新しいカリキュラムをスタートさせました。これをムルデカ・ブラジャール(自由で自立した学び)と呼ばれています。(2020年:Meredeka Belajar(ムルデカ・ブラジャール:自由で自立した学び/教育の規制緩和)5か年計画開始)
つまり現在の中学2年以上の生徒は古いカリキュラム。中学校1年生以下の生徒はムルデカカリキュラムとなっています。
※インドネシア教育の短所でもあり長所
教育大臣が変わるたびにカリキュラムが変わります。長期的ビジョンで教育が行われないという短所の一方で、新しい変化に柔軟に対応しやすいという長所もあるのです。
インドネシアの学校は政府が定めるカリキュラムの影響はさほど大きなものではありません。政府のカリキュラムは最低限度のものであり、カリキュラムの半分程度はその学校のビジョンに合わせて+αで制作されます。
例えばSDHでいうとキリスト教を基盤とした学校なので、+αとしてキリスト教教育を基にしたプロジェクト型学習を行っています。
今回のムルデカカリキュラムの特徴は、このPBL(プロジェクト型学習)がインドネシア全土で採用されたことです。
PBLに関してはSDHはすでに実施してきました。
それに加えてSDHでは(社会+芸術のような)教科横断学習を行っています。
幼稚園や小学生の時期から1つのテーマを決めてすべての授業でそのテーマに沿ったものを行うといった仕組みが行われています。
中学高校になると、1つのプロジェクトで最低2つの科目をコラボするように工夫されてています。
例えばエクササイズがテーマならば、物理や生物の教科がコラボされ探究していきます。
SDHの学びの特徴
このような学びの中で大切にされているのが「ユニークさ」や「個性」です。生徒各自の能力を尊重し、ランキングをつけないことを重視しています。
このスタンスを政府も後追いしています。
ナディム教育大臣は今まで多くの時間を割いていた国家による卒業試験を廃止しました。(2022年:小中高校の統一国家試験(UN:Ujian Nasional)を廃止)
「2022年に廃止となった統一国家試験は、基準点に達しなければ学校を卒業できない可能性のある重要な試験でした。この試験のための詰め込み教育や教師・生徒の心的負担が問題視され、以前から再検討を求める声が上がっていました。」(下記のサイトから引用)
このように「子どもたちが卒業試験の合否を心配せずに楽しく学ぶ」「学校も独立性を保ちながら授業や学校運営を行う」ことが統一試験よりも重視されています。
最後にインドネシアの教育と日本とを比較して
日本の誇る教育の長所としては、世界に類を見ない平等な高い教育の質の担保です。
どのような小さな島の学校であろうが、まったく同じカリキュラムで高い質の教育を受けることができます。
またどのように貧しい家庭でも質の高い教育を受けるシステムが整っています。
その圧倒的な平等性が日本の長所でしょう。
またGIGAスクール構想やその影響で世界で初めて小学生から高校生までの全児童・生徒が一人一台端末をもつことができました。このパワーとコスト(金額・時間)は莫大だったと思います。僕の周りの多くの先生や行政の方々がこのことに尽力されてきました。世界に先駆けて大きく教育ICTインフラを整備することを達成しました。
しかし誇るべき教育の平等性は、新しい教育を進めることができない停滞を生んでいます。コロナ休校の際も、「できない学校があるならばオンライン授業は実行しない」「できない先生がいるならば、対応に差が出るので実行しない」という事態を生んでしまいました。
世界に誇る整備率のGIGA端末も、この端末をどのように活用していくのかが次の大きな課題です。
新しい学びに対しても、ICTの教育活用に関しても各学校や自治体はビジョンをきちんと持ち、教職員とそのビジョンや道のりを共有できているのか。そのための教員研修をきちんと行うことができているのか。
各学校や自治体は明確なビジョンを持ち、全教員や生徒・保護者とそのビジョンを共有できているのか。
そして全教員は、生徒たちが未来の世界で戦うための力を養う新しい学びを行う決意をもっているのか。
日本の教育はこれらが試されるフェーズへと移っています。
世界レベルの教育改革を行うインドネシア。
真価が問われている日本教育。
インドネシアの教育に学ぶべきたくさんのヒントがあることを痛感しました。