よく見えていない人と暮らすということ
うちの夫、最近はわたしに、「とうさん」とか「おとーさん」と呼ばれている。夫は5歳下で、わたしたちの間には子供がいない。だから時折、「『おとーさん』ってナニ、そんな可哀想に…」と言う人がいる。が、夫の名前は、今のわたしには言いにくいのだ。再発して新たに増えた構音障害(口や舌の麻痺による発音や発声の障害)では、夫の名前を呼べば何故か駅の名前に聞こえてしまう。うちの夫は「ひろゆき」で平井駅ではない。でも、何度言っても平井駅になって、そうとしか聞き取れないみたいだし、そこはもうほっといて「おとーさん(おとーちゃん)」で良しとしたのだ。諦めの良さは時折良い結果を招く。で、そしてうちにおとーさんが爆誕した。
そんなうちのおとーさん。数日前から腰の調子が悪いみたいで、「ギックリ腰かも」と言っていた。それでも、わたしの通院につきあって車いすを押し、冷える雨の中会社に行き。「寒いからシチュー作りたい」とわたしが言ったのを覚えていて、昨日帰りにスーパーに寄って野菜を買ってきてくれた。「くー、重たいもの持てねえ~…」と辛そうに言いながら。
今日はさらに寒くなったので、リハビリに出かける前にシチューを仕込んでおこうかなとそのままにしていた買い物袋を見たら、玉ねぎ、にんじん、サトイモとシチューのルーが入っていた。
え、サトイモ?ジャガイモじゃなくて、サトイモ。
目見えないなんてわからないねってよく言われますけど、うちのとーちゃんの視力ってこんなもんです。生まれつきなんでコツは掴んでるし注意深いんで生活ではあんま感じさせませんけど、やっぱ見えてない。調子悪いからいつもの慎重さがぶっ飛んでる。
わたしも忘れがちになってるけど、見えてないって本人が殊更に言わないだけで、やっぱ重度弱視なのよ。そうなのよ。
最近「歯が痛い」って言うから、「あー、じゃ歯医者さん行こうか」なんて話してたけど、ふっとした時に全然違うところに夫の歯ブラシが落ちてるのを見つけて、あ、これは歯ブラシが見つからなくて歯が磨けてなかったんだ、とも思って。こういう時よくわかる。最近わたしが一緒に買い物に行けなかったり、軽く動いたりできないもんだからこんなことになっちゃうのよねえ。お互い助け合う暮らしなのにね、ごめんねえ。
さて、サトイモでシチュー作るか。。。