『ラストマイル』から見た"はたらく"とは
※記憶があいまいなところや、ネットの情報と照らし合わせ等をしていないため、実際と異なる場合がある可能性があります
先日、映画『ラストマイル』を見てきた
見終わった後の第一声は「いやあ、すごかったね」だった
見た直後は、あまりにもいろんな感情がひしめきあっていて
なにがどのように"すごかった"のか頭が理解していなかったが
とにかく"すごい"作品だということだけは頭が理解していた
いくつかの観点で振り返ってみた
以下ネタバレあり
"はたらく"とは
今回の映画の1つのテーマは"はたらく"こと
商品が出荷されてから、顧客に届くまで、多くの人が関わっている
みんな"はたらいている"のだが、彼らの描かれ方はそれぞれだった
物流センターのエレナ(満島ひかり)
アメリカ本社からの物流センター就任という、バリキャリ。
事件が起きているのにも関わらず、気にしていることは「命」ではなく「社内業績」。事件の疑惑があるにも関わらず、警察に伝えるのはアメリカの株式取引が終了する6:00AM。あの時、もっと早く伝えていたら事件が早期解決されたかもしれない。"間に合っていた"かもしれない。象徴的な発言は、「人が死ぬかもしれない。でも私の知っている人じゃないし、毎日世界中のどこかで誰かは死んでいる。」
Customer centric(すべてはお客様のために)という社内Visionの解釈も、お客様のためにという理由を建前にしているが、実際は業績を落とさないために、という本音もれもれの発言をしていた。
入社当初はやりがいのあった仕事が、徐々に精神を蝕んでいきそれでも「退職」という選択はせずに休職を選んだ。まるで、はたらくということがこの世の全てというかのように。
その結果、失敗=死を選んでしまったのがやまさきさんなのかもしれない
物流センターのこう(岡田将生)
現状維持が目標の社員。
昇進意欲などはあまり見受けられないし、淡々と仕事をこなすこう。
仕事のやりがいよりは、職場環境やしがらみのなさを重視する彼は若者の風刺のようだった。
そんなこうが最終的にセンター長に任命されるのは、どこか"逃げられない"という現代社会を描いているかのようで、末恐ろしささえ感じた。
彼が、かつてのエレンや、やまさきさんのようになってしまわないことを祈りつつ、数年後の彼が今の面影をなくしている姿も想像できてしまう。
労働問題って、どこから何を解決すればいいのでしょうかね。
羊急便のやぎさん(阿部サダヲ)
まさに中間管理職。事件が進んでいくにつれてどんどんやつれていくのが間の人だなと。物流センターとのパワーバランスによって行動の選択権がなく、「〜だから仕方がない」「〜するしかない」という発言が印象的だった。やぎさん自身がそうしたいわけでもないのが下請けとして働く人たちの苦悩をよくあらわしていた。
「俺も昔は現場で走っていた(意訳)」という発言の時、本当は局長としてではなく現場のドライヤーとして働きたいんだろうなという思いがひしひしと伝わってきた。管理者としてのあるべきと、現場でのやりがいの狭間でもがいているんだろうなと。
だからこそ、最後の「社長もドライバーとして働く!!!」と清々しくアナウンスしている姿は、とても自由にみえた
配達の親子
私たち消費者に直接商品を届けてくれる人たち
この親子のシーンは鮮やかさはないけど暖かさのある空間だった(個人的には踊る大捜査線の木島丈一郎の空気感を感じて一押しなキャラクター)
過労死でなくなったドライバーの話をしていたが、彼の労働は、休憩10分で1日200件の配達をして月50万。うーん、そんなに働いても50万かという気持ちもあるが、きっとお金のためだけではなかったんだと思う。とにかく働くことばかりしか考えられずに、逃げ方がわからなかったのかもしれない。
また、息子の洗濯機話はこの作品のクライマックスとなるわけだが、劇中で彼が倒産してしまった洗濯機の話をしている時だけすごく清々しく晴れやかな表情がとても印象的だった。
たとえ、倒産してしまったとしても自分の仕事や商品に誇りを持って働いていたんだろうなということがひしひしと伝わってきた。
誇りを持って仕事をしていたことと、社会から排斥されたことがより虚しさを高めさせた。
雨の配達の時、ビニールをかぶせて荷物を運ぶ姿は、どんな仕事であっても仕事に誇りとホスピタリティを持つことの暖かさを感じたシーンだった。一方、エレナたちの仕事は、1件1件荷物の中身を目で見ることはしないし、いつも見ているのは稼働率。商品を売上のコマとしか見ていないようだった。まあ、そうだよね。センター長が1件、1件見ていたら日が明けてしまう。
2人の娘がいるシングルマザー(安藤玉恵)
上記の登場人物とは少し登場の仕方が異なるが、彼女も労働者の1人
朝ご飯を作って、そのまま出勤する時に玄関先で、娘に小言を言われてしまう。個人的には、自分が仕事をするだけでも疲れるのにそれに家事もして、それなのに子どもにマイナスな言葉をかけられたらやってられないよ!!となってしまいそう….はたらくお母さんってすごいですね。
彼女にとって、はたらくとは子どもを守ることなのだ。
社畜が悪いこととは思わないし、仕事が好きで趣味のように働いている人がいることも知っている。ただ、気付かぬうちに自分を蝕んでいたり、視野が狭くなって逃げ場がないと錯覚している状況に陥ってしまうと戻れなくなってしまう人が多いことも知っている。
やまさきさんや筧まりかのように、誰にも頼れずに一線を超えてしまったらもう戻れない。
罪を赦すということ
作中にでてきた「罪をあがなう」という言葉
あがなうという言葉のなじみがなさすぎて、「アガナウ」??となってしまった
正しくは、贖う。贖罪の贖だ。
キリスト教の考え方で、確か創世記のアダムとイブの禁断の果実の話がベースになっていた気がする(違かったらすみません)
あれ、そういえばアンナチュラルにもMIU404にもってキリスト教の話あったなと思ったらあった!
アンナチュラル
はちみつケーキの回の最後にミコトと六郎が「何のために働いているのか」についての会話にて
MIU404
ガマさん回なので、もし気になる人はぜひ!
(労働の話とは異なるので割愛)
私たちは、罪を贖うために働いているのだろうか
ミコトは「生きるため」と言っていた
そうだよね、もっと単純でいいよね
作品のメッセージ
What do you want?
Black FridayのCMや、映画のラストでも"What do you want?"というメッセージは度々劇中で登場した。直接的な意味としては、ECサイトで何が欲しいですか?(=買いたいですか?)という意味だろうが、作品として伝えたいことは何だったのだろうか。
様々な立場の登場人物が出てくるが、それぞれの"欲しいもの”は異なっていたように思える。
五十嵐や途中までのエレナは、名誉
やまさきさんは、自由
筧まりかは、贖罪
配達の親子は、誇り?
お母さんは、家庭安定
さて、What do I want?
爆弾はまだあります、という発言
エレナが仕事をやめることを上司に伝えて、最後に言うセリフ
これは今回のような事件がおきる火種がそこらじゅうにあるということ
完璧主義もいいけれど、自分の中にある"がらくた"な要素を認めてあげることも大切なんじゃないかな。
生きてさえあればなんとかなるんだから。
ドライバーさんいつもありがとう
率直にいつも配達してくれるドライバーさんに感謝の気持ちでいっぱい
再配達のないよう、受け取れる時間を配送したいし、置き配達もいいけど直接受けとって感謝の気持ちを伝えられる人でいたいと思った
p.s.サントラと伏線に感動
アンナチュラルとMIU404が好きな人にとっては様々な伏線に心が躍る瞬間が数多く散りばめられている。
曲が流れてくるだけで、あ!伊吹と志摩出てくるかなと嬉しくなったし
アンナチュラルの白井くんやMIU404の元陸上部の子の登場は、最悪の事態になる前にスイッチできたことが嬉しかった。
制作側の作品制作に対する誇りを感じて、かっこいいなと思った。
きっとまだまだ気づけなかった伏線がたくさんあるだろうから、考察班さんたちの文章読むのが楽しみ
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