歌舞伎みてきました14 『新・陰陽師』
2023年4月。歌舞伎座にて観劇。(別のSNSより転載)
「新・陰陽師」滝夜叉姫を観に行ってきました!
夢枕獏原作のあの「陰陽師」です。
本来タイトルロールの安倍晴明(隼人)は、2幕目からしか出ません。なぜなら、序幕から綺羅、星のごとく今をときめく若手俳優たちが、ゾロゾロでてくるから。
一番楽しみにしていたのは、巳之助さんの将門。将門は、飢饉で苦しむ百姓の助けになろうと東国に下るが、妻子を殺されたあと鬼神に変じ、殺されてなお生首は笑いながら宙空を飛ぶ。生身の人間だったものが、時を経てこの世のものならざるものに変化する。そんな役を演じられる俳優さんは数少ない。三津五郎さんが観ていたら、どれだけ、誇りに思ったことだろう。
10年前(平成25年)にも上演されているが、この時と今回のキャストを比べてみると、
H25 R5
安倍晴明 幸四郎 隼人
源博雅 勘九郎 染五郎
平将門 海老蔵(團十郎)巳之助
滝夜叉姫 菊之助 壱太郎
興世主 愛之助 尾上右近
桔梗の前 七之助 児太郎
蘆屋道満 片岡亀蔵 猿之助
とまぁ、H25年当時も今をときめく俳優たちが並んでいて、その人たちはもれなく、今の歌舞伎界を背負っている。きっと10年後には、今回のキャストも、歌舞伎界を背負っていくんだろう。
そんな若手を育て、演出している猿之助は間違いなく、歌舞伎の救世主だ。コロナ禍でも欠かさず歌舞伎座に出続け、どんなトラブルも光に変えてきた。本作では、大河の「文覚」のような怪しげな陰陽師役として登場し、最後は宙乗りで締めくくった。この舞台の全体は猿之助が統べっている。「新・陰陽師」の随所に歌舞伎らしい演出が生きている。歌舞伎は現代に生きるエンターテインメントであることを、改めて教えてもらった。
※この記事を書いた直後の2023年5月。猿之助が両親の自殺をほう助し、自身も自殺未遂を図った。コロナ禍で猿之助が果たした役割を思うと無念以外に言葉が思いつかない。