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油と塩と糖を愛する「絶望のパスタ(ペペロンチーノ)」の詳しい解説

にんにくとオリーブオイルと唐辛子のパスタです。
「本場イタリアでは~」とか「ペペロンチーノは唐辛子のことで」など、そのへんの解説は諸氏におまかせするとして、今回は本当にシンプルなペペロンチーノのレシピです。(レシピは目次から飛んでください)

作り方は簡単ですが、深く理解することで楽しくおいしく食べられるパスタ料理のレパートリーが増えることでしょう。知らんけど。


なぜって面倒くさいから

冷蔵庫の中に何もないし大した食材も見当たらない。買い物にも行きたくないし寒いし、昼前にウダウダとしていたら「おまいらがやる気がないのであれば『絶望のパスタ』を食わせてやる」と、カミさん。

材料はこれだけ。例によって何か忘れてる気がする。

工夫する余地がないように思えてしまう「具がないペペロンチーノ」です。好きな人にとってはうれしい、純度の高い油と塩と糖の料理。今日もパスタは1.4mmのフェデリーニ。ゆで時間が短くて食べやすくてよいです。

にんにくは大きめのひとかけ

真ん中で切って、中の芯をとります。入れると胸焼けするらしいから。

この部分を除去する

1mm程度の厚さにスライスします。

この辺は適当で。

スライスの厚さが一定でないと薄い奴は焦げやすいけど、それもまた一興。

この2枚のスライスが大事

そして、スライスしたにんにくを2枚だけ「ゆで湯に投入」します。
これでにんにくに含まれるアイリンという成分が溶け出すのだそうです。この成分がうま味や塩味の感じ方を強化するので「コクが出る」らしいです。NHKの「トリセツショー」でやってました。

このゆで湯を使うので、これでいいのだ

にんにくの風味を特徴づける成分はアリシンですが、それはにんにくの細胞膜が破壊されてアイリンが化学変化したものらしいです。なのでアイリンは、細胞膜が破壊されないようにお湯の中で抽出するのがベターだとか。

このアイリンが溶け出したゆで湯をオイルと絡めることで、うまみ成分を強化することができるそうです。

唐辛子はパンチのきいたやつで

冷蔵庫ににんにくはあったけど、今日の唐辛子は「観賞用」です。なぜ観賞用かというと「じいじの家のベランダでなってた唐辛子がきれいだからもらってきたけど、食べてみたら激辛すぎた事件」に基づき、観賞用として位置づけられていたものなのです。

収穫したばかりの時の写真

旨そうだなと思って、一つだけ料理に使ってみたけど「劇物として指定したい」ぐらいのパンチ力でした。

半年ぐらい陰干しにしてすっかり干からびたけど実力は衰えていないはず

輪切り用とトッピングの飾りにする用の2本を使います。
辛味の成分が種にあるらしいので、そいつを取り除くためにヘタの部分を切り落として、モミモミします。

とがってる先端ではなく、ヘタのほうを切り落とす
モミモミすると種が取れやすくなります
種よさらば

辛さの記憶ってすごいですよね。こうして写真を見ているだけで、フレッシュなじいじの唐辛子を食べた時の辛さの記憶がよみがえってきて、目の下に汗が染みだしてきます。

乾燥しすぎて輪切りにならなず砕けていくけど、まぁ仕方なし

ソースづくりのポイントはまた例のやつ

オリーブオイルってなんだかすごく値上がりしてますよね。でも、この料理ではちゃんとたっぷり使うしかありません。

よく見るとイタリア語なのか英語なのかわからないラベル
「たっぷり」といってもお店で食べるよりは控えめに

にんにくはオリーブオイルを熱する前に投入して、中火で炒めるのが良いそうです。風味が油に移るとか。

風味とは主にアリシンのことではないかと思われます

アリシンは玉ねぎとか長ネギにも含まれていて、切ったり炒めたりすると香ってくるあいつです。

炒めるというより揚げる感じ?

このぐらいのタイミングでパスタをゆではじめましょう。

ねじってから鍋に投入すれば綺麗に広がります

薄めのにんにくスライスに色がついてきたら、唐辛子を投入します。

唐辛子を投入

唐辛子は炒めすぎると焦げ風味が出てきてしまって、それは絶望的にまずくなるので要注意です。

飾り用の唐辛子もいれちゃいます

そして、今回も登場するのがさっきは忘れていたコンソメです。

昨日オムライスを作ったときのあまり

ペペロンチーノのレシピを論ずる界隈では化学調味料の是非をめぐって、論争が繰り広げられているらしいですが、当家においては気にせずに使います。

このぐらいの色合いに炒めたら火を止める
そしてコンソメを振りかけておきます

そうこうしているうちにパスタをゆで始めて2分ぐらいたつので、パスタをかき回してくっつかないようにしておきます。

ぐるぐるまわして一部を持ち上げておろす

こうしてゆで湯に小麦粉が少し溶け込んだ状態になったら、ゆで湯をお玉ですくってソースパンに注ぎます。

ゆで湯にも塩分があるので味のベースになります

油とゆで湯をなじませます。良くかき回してコンソメの顆粒も溶かし切ります。

よく「乳化」って言われるけど、化学的にはそうではないらしい

このソース(ゆで湯の量)はちょっと多いかな?と思うぐらいでちょうどいいのです。
コンソメに含まれるグルタミン酸、炒めたにんにくから抽出されたアリシン、そしてゆで湯に染み出していたアイリン。この3つの「うま味有効物質」が奇跡の三重奏を奏で、『絶望してても食べられる』もしくは『絶望的に貧乏でも作れる』おいしいパスタ料理となるのです。

味の締まりを出すために岩塩をちょっと

うま味だけではさすがに力が弱いので、ここでは岩塩をガリガリっと2回まわすぐらい(角度にして180度ぐらいまわす)入れておきます。
この間、ソースパンは火であたためる必要はありません。

そして仕上げ工程~完成へ

5分半でざるにあけてソースパンに

ソースパンに入れたら(火をつける必要はない)ちょっとムキになるぐらいの勢いでよく混ぜます。

ここが最終的な仕上がりの味を左右するポイント

気持ちとしてはパスタ一本ずつソースに纏わせたいぐらいです。ソースパンを振って全体にくまなく味をつけていきます。

気を抜かないことが大事
そして盛り付け
湯気とおいしそうな香りに家族があつまってきます
残ったソースもそれぞれの皿に分けていきます

しかし、本当に具がない。

見栄えがしない

そうそう飾り用の唐辛子を探して、トッピングして、これで完成。

飾り用の唐辛子が砕けてしまった

シンプルな味わいながら麺好きの子供には「もう一皿たべられる」と好評。
ここまでシンプルだとちょっと前菜っぽさが出てきちゃって、大人は満足感に欠けるかもしれないけど、もりもり食べられる味ではあります。

食後にデンタルフロスをかけたカミさんが「フロスしてる間も味わいが続く」という微妙なコメントを残していたことも添えておきましょう。

レシピまとめ

材料(2人前)

  • パスタ 200g

  • にんにく 1片

  • オリーブオイル 大さじ2

  • 唐辛子 1本(お好みで)

  • コンソメ顆粒 2g

  • 岩塩(普通の食塩でも可) 少々(0.5g程度)

作り方

  1. たっぷりのお湯を沸かし塩(分量外:水に対して0.5%程度)を入れる

  2. にんにくをスライスし、そのうち2枚はゆで湯に投入

  3. スライスしたにんにくを中火でオリーブオイルで炒める

  4. にんにくに色が付き始めたら唐辛子加えて炒める

  5. パスタをゆでる(標準ゆで時間)

  6. 炒めたにんにくと唐辛子にコンソメを加える(加熱は止める)

  7. パスタのゆで湯をお玉ですくって、6.のコンソメ顆粒を溶かすように混ぜる

  8. ゆであがったパスタを7.に入れ、オイルをよく絡ませる

  9. 盛り付けて完成

その他の「具がある」タイプのペペロンチーノの記事もご笑覧ください。

コンソメ顆粒のリンクも貼っておきます。4.5g×8本×5個なので、結構大量です。ご留意ください。


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