短編小説 神屋宗湛 - 砂浜に町を描いた男 - (2)
天正の博多
仲夏にさしかかる。
博多の町の外では、百姓が背振山地の稜線を背に、はりつく日射しの中で苗代に種を撒いて汗を流していた。
町の外から湊へと赴けば、焼けた博多に点在する町家は荒れて痛ましいものの、往来に人通りは絶えず、沖には廻船が入ってきている。町をゆく人々の中には異国人の姿もあった。
それらに加えて今は、関白秀吉率いる豊臣勢に与した武士たちが、薩摩の島津勢力を降して博多に凱旋したばかりである。
この記事が参加している募集
最後までお読みいただきありがとうございます。 今後も皆さまの読書体験に貢献できるよう活動を続けてまいります。 いただいたチップは創作の活動費に充てさせていただきます。 何卒ご検討をお願い申し上げます。