見出し画像

エッセイ 冬のひかりと風邪アタマ。



1.時をえらばず。



 深夜、咳き込む自分に驚いて目が覚める。
 掛け布団と毛布にくるまれていても、足先は冷えて凝っていた。

 のっそりと起き上がり、布団を前に倒して胡坐して、喉を押さえ、
「なんだかなァ」
 と、愚痴をこぼすように独りごちる。声がかすれている。

 そのとき、真っ暗な寝室でそばのカーテンの隙間から、白い光点が横目にちらついてきた。
 部屋の壁に一瞬だけ、私の型をくりぬいた影が走る。
 遅れて車が走り去っていく音が聞こえた。
 深夜もいいところだというのに。

 ポットに残っていたぬるま湯でうがいをする。
 跳ねっかえる横髪を指の腹で撫でた。

 寝ている間、いくらか咳き込んでいたのかもしれない。
 いつもより喉が乾燥していて、呼吸がかすれるような、息がひっかかるような。

 どうやら自分、風邪をやらかしたくさいな。


2.時のありよう。



 少し前に、『季節の変わり目だから』という、風邪を引いたときにポカリを飲むクセという話をしたと思う。

ここから先は

1,830字
毎週火曜日、ゆるい"ひととき”のショートエッセイ。 「文章で景色を描く」をテーマに余情表現を探求する小説家、ななくさつゆりのエッセイが定期購読マガジンになりました。 1記事で短くまとまる情景のあつまり。 普段あまり読書をしないという方も、文章から情景を思い描ける読書玄人の方も、幅広い方におすすめです。 普段のショートエッセイに加え、過去記事で掲載しなかった追加エピソードやこぼれ話も一緒に載せていきます。 初月無料でご購入いただけます。ぜひ読んでみてください。

【ジャンル】日々のことをゆるく語るエッセイ 【おすすめ】現代をゆるくマイペースに生きるひとたちの情景が軽やかな文章で楽しめます。 【1記事…

最後までお読みいただきありがとうございます。 今後も皆さまの読書体験に貢献できるよう活動を続けてまいります。 いただいたチップは創作の活動費に充てさせていただきます。 何卒ご検討をお願い申し上げます。