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昔の友人に再会したような

近所に大きめの古本屋がある。
たまに新潮のクレストシリーズが大量に出ていたりするので今週どうかな〜と覗いて見つけたこの一冊。

表紙もページもちょっと黄ばんでいるのでブックカバーをかけて読む

アン・タイラーのブリージング・レッスン。
彼女の作品で初めて読んだのがこの作品だった。

アン・タイラーといえば映画にもなった「アクシデンタル・ツーリスト(偶然の旅行者)」が有名だけど、個人的にはこのブリージング・レッスンがいちばん好きだ。とはいえ当時は図書館で借りて読む派だったので実物は持っていなかった。なのでうっすら汚れも浮いている古本だったけれどいそいそと購入し、この週末で半分くらいまで読み進めている。

この本を読んだのは確か、社会人になりたての頃だった。当時は実家から職場へ通勤していて、毎日1時間弱は読書の時間が取れていた。西武新宿線に揺られながら、ルート1の風景を思い浮かべたのを覚えている。

物語の舞台はアメリカ中西部の田舎町。主人公はドジでヘマばかりしているパートタイマーの中年女性。友人の葬式に夫と車で出かける道中を背景に、これまでの人生が次々に回想される、という構成だ。

それぞれのエピソードは小粒で微笑ましいけれど、ドラマチックというわけではない。というより、何らかのドラマやハッピーエンドを期待して読み進めると、肩すかしを喰らってしまう。だって何も起こらないから(ネタバレですみません)。でも、それがこの小説のテーマ。短い旅を終えた夜、主人公は人生をぐるぐると回る円なのだ、と達観する。

初めて読んだ時、退屈なドライブに乗せて小さなエピソードを次々と登場させる手法に上手いな〜と感心したものだけれど、主人公に年齢が近づいた今はまたちょっと違う味わいを感じている。明るく能天気なイメージのアメリカの裏側にある、ドライな哀しみややるせなさ。学生時代は優等生だった友人にばったり出会ったら、お互いに仕事の行き詰まりや介護といった共通の悩みを抱えていたんだね、と分かり合えた様な感じだろうか。

余談だけれど、マギーの息子のジェシーは今頃、熱狂的なとランプ支持者になっていそう。そういえば今日はスーパーチューズデーね。

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