英日翻訳と日英翻訳はどちらが難しいのか。
まずまさかの結果から。どちらが難しいのか、も何もない。間違いなくどちらも難しいのだ。翻訳は1つの答えがあるわけでもなく、訳者ですべて変わる。いくらでも時間をかけられる。こねくり回しているうちに、“モトイキで”となるのが常であったり。
ということを前提に、ぽっとわいた疑問を記したい。
時折、翻訳業界以外の人から、翻訳料について相談を受けることがある。相場を教えてくれと。だが、私は映像翻訳、しかも字幕のことしか分からない。技術翻訳やら文芸翻訳やらまったく違う分野なので、その辺の翻訳料がいくらかはまったく知らないのだ。なんなら吹き替え翻訳のギャラにも詳しくない。自分の専門である字幕でさえも、ベテランと私とでは金額は異なるはずだ。
最近、友人から日英の翻訳者を探していると連絡を受けた。その話の流れで、英日と日英のギャラには差があるのかという話に。日英の仕事を受けたことがないので分からない、と答えた。しかしもしどちらもネイティヴレベルだとしたら、どちらが難しいのだろうかと疑問がわいたである。
翻訳で最も大事なものは、置き換える側の言語力だ。英日であれば、日本語力となる。だが、もちろん英語の読解力、理解力などは基本だ。日常で母語で会話をしていても、相手の発言の意味を勘違いすることはあるが、仕事の場合、その勘違いは“誤訳”という翻訳者にとって最上級に打ちのめされる二文字で表現され、まったくもって許されない。私が翻訳をしている時、原音を理解するという点で苦労するのは、やはりその国に根付いた表現だ。クリスチャン用語であったり、さりげなく日常会話に潜む聖書やシェイクスピアの引用、そしてスラングだ。スラングといえば、ヒップホップなり、アフリカンアメリカンの言葉を想像するだろう。確かに彼らの言葉も難しいが、興味がある人が多いので、調べると意外とヒットする。私が何気に苦労したのが、オーストラリア英語だった。オージーの労働者階級の人たちの言い回しがなかなかのくせ者で、しかも調べてもあまり情報がない。あとは英語ネイティヴではない人が話す英語。これはもう地獄である。自分の話す英語は棚に上げて言っています。ということで、英語はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ・・・のみならず、世界共通語のため話す人が非常に多い。その分、住んでいる場所や人種により、クセがある、というかまったく異なる言葉にさえなり得るのだ。
一方の日本語といえば、基本的に日本人しか話さない言語である。地域によってアクセントや多少の単語の違いはあれど、スラングは少ない。もしかするとそれほど難儀ではないのではないかと思った。
と、ここまで書いて、だから何だよと思ったわけだが。。。結局、私が日英の翻訳ができるわけではないので、実感ができない。このあたり、日英と英日の両方ができる人に話を聞いてみたいと思っている。なんだこの尻つぼみ感。。