#008_【組織的公正】リストラクチャリング後に残ったメンバーの反応とは・・・?(#4-74)
本日の論文への惹かれポイント
ダウンサイジングや組織再編については組織的公正の枠組みで研究が進んでいます。流動的な時代、不確実性の高い時代。
このテーマは避けられないですよね。
今回もそちらを読んで行ってみたいと思います。
この論文の目的は?
組織再編における、残った社員の反応の検証として、手続き的公正、対人的公正、情報的公正に対する生存者の認識とその先行要因について複合的に検討することが目的となっています。
先行研究では、公正さの先行要因ー公正知覚、などと断片的な方法で研究されてきたが、先行要因ー公正知覚ー反応という包括的なモデルを開発し、検証しています。
POINT1. 手続き的・対人的・情報的正義の先行要因
組織再編成における手続き的公正、対人的公正、情報的公正の先行要因として、Employee Input、Support for Victims、Communication、Implementationという4つがあげられます。
<Employee Input>
従業員の意見・声
影響①:手続き的公正
組織再編の文脈では、意見表明を許された従業員は、公正な手続きが守られるという機会を得ることができる。それにより、手続き的公正の認識が高まるとされています(Leventhal, 1980)。
影響②:対人的公正
人々は集団や組織との関係を重視し、これらの関係の中で公正に扱われることを期待しています(Lind & Tyler, 1988)。この観点から、意見を求めることが重要。
従業員に対して、自分たちが組織の大切なメンバーであることを示すことができる。
<Support for Victims>
解雇される従業員への支援に対する知覚
影響:対人的公正
組織再編成の犠牲者は、解雇される従業員。
支援は、解雇された人に対する再就職支援サービス、キャリア・カウンセリングや退職パッケージなどがあります。
こうした支援が残った従業員の公正知覚に影響を与える可能性があると考えられています(Brockner, Grover, Reed, DeWitt, & O'Malley, 1987)。
<Communication>
影響①:対人的公正
影響②:情報的公正
組織再編の過程で従業員が経営陣から受け取る情報の質。
残った従業員に対して、正確で、タイムリーで、役に立つと認識される、再編成プロセスのすべての段階に関する継続的なコミュニケーションは、公正さについての肯定的な見解を発展させるのに重要。(Brockner & Greenberg, 1990; Novelli et al., 1995)。
<Implementation>
従業員における正義の知覚は、実施された組織再編成が経営陣の掲げた目的を達成していると従業員が感じると考えられている。
影響①:対人的公正
実施に関する知覚は、信頼の問題や、従業員が尊敬と尊厳をもって扱われていると感じているかどうかに関係。
これに限らずですが・・・経営陣の発言と行動に矛盾があると、従業員は経営陣を信頼できないし、従業員は経営陣が本当に従業員の幸福を考えているとは認識しにくい。
従業員が経営目標と行動の間に一貫性があると認識するほど、対人的公正の認識が高まる。
POINT2. 手続き的・対人的・情報的正義の結果
結果はこんな感じ。
3つの公正変数はすべて、Time1における管理職への信頼に影響していると仮説を立てたが、手続き的公正と対人的公正は、情報的公正よりも重要な因子であることがわかった。
(意外だったのは)職務満足度は手続き的公正しか影響していない。
これはダウンサイジングに伴って、職務変更、負荷の増加などがあり、それに対して、従業員が、自分には仕事を遂行するための心理的資源があると信じていない限り、積極的に反応する可能性は低い(Mishra & Spreitzer, 1998)とされており、「なぜそれを自分が負うのか」という説明責任が、職務満足度や組織コミットメントといった従業員の反応と職務充実度との関係を緩和している可能性がある。
POINT3. 時間という概念
この研究では、ダウンサイジング後とその2年後で比較をしています。
(2年という時間経過の中では正確にJusticeだけを測ることができるのか、という疑問はありますが・・・)
Outputの中で、管理職への信頼だけはすべての公正要素が影響していました。そして、注目すべきはTime1ではすべての公正要素が影響していましたが、Time2では手続き的公正しか残っていないこと。
そして、組織は非常にダイナミックに変化し続けます。
従業員が最初のダウンサイジングに直面した後、別のタイプの変化が訪れることもある。そのような状況に対して、残った従業員が将来の組織の変化に対して袂を分かったり、冷笑的になったりしないように、最初の変化プロセスを正しく管理することが極めて重要である (Reichers et al., 1997)。
感想
この論文の結び
思想は色々あると思いますが、私は「終身雇用」自体は悪いことではないと思っています。問題なのは年功序列や適切な報酬管理・評価がなされていないことなのであって・・・
ただ、ここを変えるためにも雇用の流動性は高めざるを得ないのだろうと思います。(それが今)
今は過渡期。
ものすごく組織が変化する時代だな、と思います。
また、すでに終身雇用という慣習にいない新しい会社に関しては、「終身いてもいい」会社として、いかに「従業員が会社に対してポジティブであるか」という変数を追求し続ける必要はあるのかな、と思います。
そして、経営層や上司といったマネジメントラインの重要性。世の中のマネジメントの皆様、大変だなぁ、と思わずにはいられません。