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「コーチングは誰のためのもの?」コーチング業界の功績と課題を考えてみた


これまで探究してきた「コーチング/コーチング業界」。

今回はあえて、コーチングのいいところだけでなく、疑問が残るところ、課題だと感じるところも含めて捉え直してみたい。

このnoteは書いてから5ヶ月ほど時間を置き、その間数人とこの文章を真ん中に置いて対話をし、文章を発酵させる期間を設けてみた。

コーチング業界への疑問を言語化するとき、私が「何をオブラートに包みたがるのか?/断定的に語ることを避けるのか?」「どんな人たちからの反応を怖がったり嫌がるのか?」を知るための実験でもあったのだ。

自分にとってそれほど丁寧に扱いたい大切な探究テーマの一つである。

長編作になってしまったが、このnoteがコーチング業界の「現在地」を捉えることや、対話や議論、そしてコーチ自身の振り返りのきっかけになることを願っている。



このnoteを書く理由

これを書いている私の現在地

コーチングと出会ったころ
コーチングの世界観に魅了され、「コーチングの世界観が広がることの価値」に対して疑いがなかった。
子どもを妊娠し、未来について考え始めた2020年ごろ
「コーチングの世界観を広げることが子どもの未来につながる」と感じてそれまでの仕事を全て完了し、コーチングの会社の経営に携わることを決めた。
そして現在
個人としてコーチングは提供しているが、経営そしてコーチング業界から距離をおいて9ヶ月以上が経つ。

そんな変遷を歩んだ今だからこそ、これまでの中では最もフラットにコーチング業界を捉えることができるかもしれない。

「コーチング業界」の歴史を振り返ってみて感じたこと

今年の2月ごろから、コーチング、心理療法、心理学の歴史にとりつかれるように夢中になった。

  • それぞれのアプローチが誕生した背景や、誕生させた人物の生い立ち

  • なぜその時代の中でそのアプローチが広がっていったのか、必要だったのか

  • その歴史の流れは、誰から誰にバトンがわたり、今の形に辿り着いているのか

  • そして、今私たちはどんな時代観の中で、何を受け取っているのか

そんな問いを持ちながら、探索的にコーチングを眺めていた。

歴史を振り返る中で感じたことは、以下の3つだった。

  • コーチング業界では何度かの「変化の波」が起きてきていて、2020年前後から現在の私たちは「変化の波」の一つにいること

  • これまで業界の中で何度も繰り返してきていることがあること

  • 業界の中で変わらず残り続けている課題があること


今の時代を見つめ、次の時代の発展に繋げたい

時代を捉える際に、よく思い出す好きな言葉がある。

「前の時代の解決策」は「次の時代の新たな課題」になる

「学習する組織」を学ぶ場で、福谷 彰鴻さん(ふくちゃん)からいただいた言葉
  • 今の時代の解決策が、「次の時代の課題」を生んでいるとしたらそれはなんだろうか?

  • これまでの歴史の中で繰り返されていることはなんだろうか?(終わらせられていない課題があるとしたらそれはなんだろうか?)

  • 反対に、今の時代だからこそ享受できることはなんだろうか?

  • そして、それが後世に与える影響があるとしたら?

そんな問いを持ちながら、これまでたくさんの学び、生きる知恵、そして大切な人との出会いをいただいたこの業界の発展に、小さくても還元できたらうれしい。


「健全な批評」のための2つのスタンス

私の中に「業界に対する願い」があるのと同じくらい、言葉にしきれない「業界への疑問」がある。

同時に、「一辺倒に批判をしたくない」「誰かを傷つけたくない」という気持ちも存在している。そこで、コーチング/コーチング業界への疑問を語る前に、「健全な批評」のための2つのスタンスを自分自身に課してみた。

スタンス1:その「奥にある物語」を探る

健全な批評のヒントにつながった、通称「満員電車ベビーカー事件」

満員電車ベビーカー事件は、「満員電車にベビーカーで入ってくるなんて、配慮がない」というコメントからいろんな意見が飛び交ったという話。
「満員電車でベビーカーで入ってくるなんて、配慮がない」と批判している側には、「自分のことも大切にしてほしい」という欲求が存在している。
そして、同時に「“満員電車でベビーカーに入ってくるなんて、配慮がない”と言っている人に対して反論をしていた人」の奥にも別の「自分の気持ちもわかってほしい」という物語が存在する。
その人の行動の裏には、正論や事実だけでは片付けられない内的な感情があるという話である。

一辺倒に意見をぶつけるのではなく、「その奥にあるそれぞれの物語」を見つめる視点を忘れずに、健全な批評になることを目指したい。

スタンス2:「いま」もプロセスの一部という捉え方

「過去からの恩恵と損失は必ず同時に存在する」

これまでの歩みから受けた恩恵に感謝をし、それによって何を得て、何を失ったんだろう?
という問いを持ちながら、「次の一歩」に好奇心を持ちたい。


そもそも「コーチング」という言葉の意味するものと今回の批評で捉えたい範囲

「コーチング」という言葉が意味するものは、実に多様だ。
それ故に、議論をする上でも視点がばらけてしまって深まりづらい特性がある。

『「コーチング」の歴史を再構成する』という原口 佳典さんの論文でコーチングは以下のように分類されている。

1. トレーニング手法としてのコーチング(スポーツ)
2. ビジネス現場での関わり(関係性)としてのコーチング(部下指導)
3. マネジメントスキルとしてのコーチング(2の内容がよりスキルとして落とし込まれたもの)
4. 専門サービスとしてのコーチング(経営者向け)
5. 研修でスキルとして伝えられるコーチング
6. 自己啓発セミナーとしてのコーチング
7. プロフェッショナル養成(資格ビジネス)としてのコーチング(コーチングスクール)

今回は、toC(個人向け)のプロフェショナルサービスとしてのコーチングに範囲を限定して捉えていきたい。

これまでの時代の功績(恩恵)

業界に対する批評に入る前に、まずはこれまでの時代の「功績(恩恵)」を感謝の気持ちも込めて言葉にしてみる。

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