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ヒットの種:マーケティング入門⑰ スキーマと丁度価値差異

今日もご覧いただきありがとうございます。
ヒット商品研究所では、ヒット商品のヒット理由を法則として分析していますが、様々な理由の中から、特に重要なものを抜き出しているのが実情です。法則の再現だけでは、ヒットに繋げるのは難しく、マーケティング戦略を組み立てなければなりません。
ここでは、マーケティングの初心者向けに、マーケティングの基礎を解説していきたいと思います。
今日は、人間が物事を捉える枠組みのスキーマと、適度なスキーマの不一致であるちょうど価値差異について、解説していきます。

スキーマと丁度価値差異

スキーマ

我々人間は、ある対象や事象に対して、構造化された知識を持ち、一定の枠組みを当てはめて判断をしています。この枠組みのことをスキーマと呼びます。いきなり小難しい文章で始まりましたが、具体的な例を交えれば、それほど難しいことはありません。

我々は無意識にスキーマに当てはめて、見た動物を猫や犬と判断をしている。

例えば、外を歩いているときに、動物を見たとします。その動物は、体長が30cm程度、全身が毛でおおわれていて、四足歩行で、にゃーんと鳴いています。そう、「猫」です。このような特徴を持つ動物を我々は「猫」と呼んでいます。全身が毛でおおわれていて、四足歩行であっても、ワンと鳴くものは「犬」と認識するでしょう。この猫や犬を分類する特徴やイメージがスキーマとなります。動物を見たときに、猫の特徴という枠組み=スキーマに当てはめて合致すれば「猫」と判断し、異なれば別の枠組みを当てはめ、犬の枠組みに当てはまれば「犬」と判断するわけです。
消費の場でも同様のことが起きています。

例えば、スーパーの店頭で手に取ったものが「ビール」と認識できるのは「ビールとは何か?」という概念を持っていて、スキーマとして活用、枠組みに当てはまると判断されているためです。
この時に、スキーマは商品に対する活き活きとしたイメージを呼び起こします。ビールであれば「黄金色で泡立つほろ苦いアルコール飲料」というイメージが呼び起こされ、ビールだと認識されます。
ここまで、商品カテゴリーのレベルで話を進めてきましたが、スキーマは商品に対しても存在します。例えば、ビールの中でもアサヒの「スーパードライ」であれば「キレのある辛口の味わいで、スッキリした味で、銀色の缶のビール」といった感じになるでしょう。このイメージと、今のニーズが合致するため、安心して商品を買うことができます。

スーパードライはシルバーのデザインを基本とし、イメージを作っている。

逆に言うと、このスキーマに一致しない商品は、消費者が商品を見ても何なのか判断ができない、もしくは別の商品だと認識して買おうという気持ちになれません。ビールなのに缶のデザインをオレンジジュースのようにしたら、オレンジジュースだと認識され、例え中身がビールであっても、ビールを買いに来た人が買うことはないでしょう。
また、まったく世の中にない新しい商品は、この「商品が何なのか」というイメージ作りから始めなければなりません。その時には今あるカテゴリーのスキーマを利用した方が、より容易にイメージを作ることができます。

丁度価値差異

「スキーマに一致しない商品は、消費者が商品を見ても何なのか判断ができない、もしくは別の商品だと認識して買おうという気持ちになれない」という状態をもう少し専門的な言い方をすると、「消費者の中で積極的に情報処理が行われない」という言い方になります。
一方で、スキーマに一致する場合も、実は「消費者の中で積極的に情報処理が行われない」ことが多いのです。
例えば、町中で普通の猫を見かけたとしても、通常は「あ、猫がいるな」で終わるでしょう。見慣れたものになってしまうと、それほど気をひかない=情報処理が行われないのです。
そこで、重要になるのが、適度なスキーマの不一致です。
もし、町中を1mもある猫が歩いていたらどうでしょうか。「うわ!何あれ!?猫!?」と注意をひかれることでしょう(ちなみに、メインクーンという猫は1mほどになるそうです)。この時、猫の特徴に対して、体長という合致しない部分があることで、気を引いて情報処理が行われる一方で、トラやライオンほど容姿が猫と離れないことで、猫として認識されます。

体長が1mにもなるメインクーン
(画像引用元:https://www.hash-hugq.com/cat/article/detail/id=5596)

商品でも同じことが起き、商品が新しくなったのに、これまでのスキーマに一致していると、新しい商品だと認識されません。一方で、新商品だからといって、ガラッとすべてを変えてしまうと、前述の通り別の商品だと認識されてしまいます。ですので、多くのメーカーがこれまでのスキーマの範囲で、それでいて違いを感じてもらえる範囲を狙い、商品の陳腐化を防ぐ努力をしています。
その代表的な例が、パッケージやロゴを少しずつ変えていくことです。

花王のロゴの変遷
(画像引用元:https://www.hanano-ya.jp/blog/design/12426)
UCCミルクコーヒーのデザイン変遷
(画像引用元:https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/takehiko-sawaki/2020-00459)

この既存のスキーマの範囲で、それでいて違いを感じてもらえる範囲をスキーマの適度な不一致といい、商品の価値の変化を感じてもらえる丁度良い所、ということで丁度価値差異と呼びます。商品を長く展開する上では、この丁度価値差異を意識する必要があります。
他にもグーグルクロームのロゴや、ペプシコーラのロゴなど様々な例があるので、ぜひ調べてみてください。

今日はここまで!


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