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2019年10月の記事一覧
アンバーグリスの心臓
クジラ狩りの船団が空と海とに浮いていた。
初猟日の空はその年も底抜けに晴れて、天国の跡地まで見通せそうだった。
人だかりのできる港を避けて、ミオは町はずれの砂浜で一人、遠ざかる船影を見送った。
武装飛行船の細い腹はみるみる小さくなって、もう米粒のようだ。その影を追いかけるように、網や大砲を積んだ大型漁船の群れが海上を走っていく。
漁船の一つにはミオの父親も乗っていた。
家を出る前の早朝、父は身支
灰とメタルと薔薇の蜜
薄墨色の血が音もなく噴き上がった。
それは黄ばんだ日光に触れるや否や、空中にあるうちから瞬く間に乾き、灰の雨と化して降り注いだ。
踏み荒らされた紅色の花畑に、雪のような白が積もっていく。その只中に座り込むロゼの頭上にも。
彼女の村を滅ぼした〈重装機鬼〉は、そのようにして唐突に死んだ。
見上げるような鉛色の巨体が、ロゼの目の前に膝をついて項垂れ、ぴくりとも動かない。
頭部の断面から灰がさらさらと零れ
虹の干潟のアーダイド
「セッカ、後ろだ!」
叫び声と共に背中を突き飛ばされ、セッカは泥濘に叩きつけられた。
たちまち青黒く粘ついた泥が四肢を捕らえ、全身を引きずり込もうとする。
マスクの通気孔が塞がれれば死は免れない。必死で身を捻って仰向けになり……セッカは、自分を庇った仲間の首が、鈍い錆色の顎に食い破られるのを見た。
「が、ぁぐっ」
ゴーグル越しに見える顔色がみるみるドス黒く変色し、剣を握った手が激しく痙攣する。
生