氷谷八尋
・毎日更新。・400字以上。・暴力重点。・文章を書くこと、特に継続して書くことの練習としてやっています。
noteまたはカクヨムに投稿した自作のイメージ絵を自力で描いたもの
先日引っ越しをして一人暮らしを始めました。今年は創作のほうは完全にストップしていましたが、個人的な生活においては大きく前進できたと感じています。不安は大きいですが、この変化がよりよいインプット・アウトプットに繋がることを願ってやみません。
イベルテの王が暴君と呼ばれたのは、その在位期間四〇七九年の内、僅か最後の十年のみである。 それでも後世の人間は彼を悪と呼ぶのだろう。 かつての暖かき時代、不滅なる王の腕の中に安らいでいた理想郷――その面影はどす黒い血のヴェールの彼方に霞み、永久に穢れた。 かのユールゲルドの日食の年、季節は冬。 王は宮廷前広場にて自らの公開処刑を執り行わせた。 〈楽園の対価を支払うときだ。民よ、我が無聊を慰めよ〉 首斬り斧の閃きと同時、広場に放たれた魔虫の群れが群衆に襲い掛かる様を眺め
お久しぶりです。とても健康です。この頃徐々に人間的生活を送れるようになり、またしばらく前にロストしていたノートPCを調達できたため、そろそろ創作も再開できるかな~という気持ちです。なお、書き溜めはほぼ増えていません。許せない
お久しぶりです! 氷谷八尋です。 (↓以下、全て言い訳) いや、何か……時間、加速してませんか? 実をいうとちょっと人生のほうに気力を全集中しなければならない事情がありまして、ここしばらく一旦小説に関する記憶を全て失ったという体(てい)で生活していたのですが…… おかしいな……こんなに休むつもりでは……(そろそろ前回更新から2ヶ月が経過) このままオレンジ農家エンドに向かうつもりだけはありませんので、ぼちぼち脳を調節して執筆再開していきたいと思います。 プロットは何
こんにちは! 氷谷八尋です。 今年の逆噴射小説大賞も応募締切となり、参加された皆さんお疲れ様でした。 私が投稿したのは今回2作品のみに留まりましたが、マジで今月その1600字しか書いてないです。死ぬんか? ま、まあそんな時もありますよね。 量は置いといて質のほうは、前々から温めていたアイデアをわりと綺麗に形にできたのではないかと思います。 セルフライナーノーツ① 文明崩壊後の世界で、アンドロイドの女と人間の女が「綺麗な色」を探す旅に出る話。 アンドロイドの名はインディ
カギカワ第一発電所から、墨で引いた線のように竜煙がたなびいていた。 「久々に風が出てるな」 父が言った。 父のそんなに穏やかな声はそれこそ久々に聞いたので、落ち着かない気持ちになったのをミヤトは覚えている。 その日は街中、島全体が、そんな圧し殺したような非日常の気配に覆われていた。 真昼の街に消し忘れのネオンが空々しく光っていた。 頼んでもいないのに買ってもらった氷菓をミヤトは大人しく舐めた。 父と母は半日の間優しかったが、日暮れ頃には結局些細なことで言い争いを始めた
「青い血が欲しいんでしょう、〈ヴァンパイア〉。お願い、私を殺して」 初めて会ったとき、彼女は泣きながらそう言った。 ガラクタだらけの荒野を、どこからか必死に這ってきたのだろう。 砕けた両膝から火花を散らしながら、彼女は私の住み処、戦争時代の古い古いトーチカの前に横たわっていた。 彼女が人造種〈アーティファクト〉であるのは明白だったけれど、私はなぜかいつものような渇きを覚える代わりに、その真っ白な肌の上を流れていく透明な涙に目を奪われてしまった。 彼女を家の中に入れると
こんにちは。氷谷です。 先日、今年の始めから……え!? 今年の始め!? う~ん(気絶) ……今年の始めからおよそ半年に渡って無駄に長々と連載していた小説が一区切りつきました。 こういう形で書いては出し、書いては出しながらまとまった分量のお話を書くのは初めてだったので、とにかくちゃんと最後までやった自分めちゃくちゃ偉いなとは思うんですが、しかしまさかこんなに時間がかかるとは思ってもみませんでした。 「いきなり長編なんて書けるはずないし、まずは短編を書こう!」という方向性は
(1) (前回) ◇ ――時は遡り、その日の早朝。 死闘の後、消えぬ悪臭が漂う村の一画にて、焼け残った家屋を借り一夜を越した三人の〈猟犬〉の耳に、近付いてくる足音と人声の群れが届いた。 ほどなくして現れたのは、西の隣村から恐る恐る様子を見に来た村人たちだった。その中には、このタタゴ村から隣村まで逃げ延びていたほんの僅かな生存者の姿もあった。 話を聞くと、彼らは一昨日の夜の襲撃時散り散りになって難を逃れたが、数人は森の中にひたすら隠れて息を潜め、夜が明けて暫く経
(1) (前回) ◇ 翌日、昼少し前。 一日ぶりに谷から戻った〈猟犬〉らのもたらした知らせは、ハリの町中に瞬く間に広がった。 「なんと……タタゴ村のことは残念ですが、まさか本当にあなた方三人だけで〈鬼火狼〉を倒してしまうとは……」 「まあな。なかなか危険な奴ではあったが、こっちも悪運が味方についてるんでね」 顔を見合せる自警団の男たちを前に、イルハはヘラヘラといい加減な返答をする。 正式な討伐報告は王都へ帰ってからの事で、ここではひとまず危険が去ったことを周知
(1) (前回) リューリは手を伸ばすこともしなかった。 両手は剣の柄に、速度も緩めることなく駆け抜けざま、ただそれを一瞥した。 瞬間、投げられた〈遺物〉の軌道が空中で鋭角に折れ、加速。 一直線の残像を引き、それは――知られざる智恵を秘めた古代の機構、忘れられた神秘の再生装置ではなく――超高速で射出された一つの金属塊として、弾丸の如く獣の額へと突き刺さった。 骨が陥没し、肉が爆ぜた。 眼球が飛び出し、あるいは破裂した。 血とも脳漿ともつかぬ夥しいものが噴
(1) (前回) ◇ ニズは〈遺物〉の引き金を引いた。 連鎖的に機構が作動する微かな金属音。【解読不能】の言語で刻まれた回路が繋がり、秘された意味へと流れ込むマナ。形を成し、生み出されるのは擬い物の魔法。 リューリの腕を掴み、広からぬ防御範囲の内に引き寄せて背に庇う。 瞬時に構築された不可視の盾が、眼前を黒く染める焦熱の煙を受け止め、そして。 〈?章再生〉 〈原典―不動の聖女〉 〈鏃の光。火炎縲よュッ縲らゥコ陬ゅ¥魑エ蜍輔?りァヲ繧後※邨ゅ↓閾ウ繧翫?逆しま
(1) (前回) ◇ (……!) 全ての光景を瞬きもせず目に焼き付けながら、イルハは強く歯噛みした。 ほんの僅かな攻防の内に、理解せざるをえなかった。〈鬼火狼〉に打ち勝つ力など、彼ら三人は到底持ち合わせていなかった。 この場においてあの獣に対抗し得たのは、元よりあの〈青の剣〉と、怒りに満ちた少年をおいて他になかったのだ。 その希望も〈呪い〉に蝕まれ、呆気なく消えようとしている。 (俺は選択を誤ったか? この賭けは無意味だったか?) その問いこそが無意味だと知
(1) (前回) ◇ …… ほんの僅かな一瞬、ニズは期待を覚えた。 青い閃光が〈鬼火狼〉目掛けて走り、沸騰する血液が煙を上げながら宙に撒き散らされた時。 少なくとも彼ら三人が討伐を任された獣は、この稀有な力を手にした少年が討ってくれるのではないかと。 務めに対する誇りや責任感などニズには元よりない。何よりも自分自身が生き残るために、選ばざるを得なかった〈猟犬〉の道だ。 骨ごと斬られ千切れかけた脚の一本を引き摺り、残り四本の脚で〈鬼火狼〉は向き直る。 憤怒
(1) (前回) ◇ 【――】 ……ドクン。ドクン。 ドクン。ドクン。ドクン。 記憶の光景が不安定に揺らぎ、明滅し始める。 真紅の暗闇の中で、リューリは懸命に目を凝らす。 (これが……) 〈獣の呪い〉。 過剰なマナに心身を侵された魔法使いの末路を、誰もが知っている。 しかし変貌の一瞬、当人の意識の内で何が起こっているのか、その詳細を知る者はいない。語られることがないのだから。 〈呪い〉に耐えた、あるいは「引き返した」――そう言われる者も少数なが
(1) (前回) ◇ 「……ああ。俺の責任だ。全部な」 星も月も死んだように暗い夜更け、狭い小屋の中を唯一照らしていたのは、床板に突き立てられた見知らぬ剣がひとりでに放つ、美しく清澄な青い光だった。 柱に背を預けて座り込むヒノオを、リューリは見下ろしていた。 隣村から走り通して来たボロボロの足で立ち竦み、言葉もなく。 「〈青の剣〉……俺の力……俺の恥。取り返すだけで、精一杯だった……もう魔法も使えねえんだ、ずっと、俺は抜け殻だったのさ……ははは。見たか? リ