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クレーヴの奥方 * 読んだ

どこかで読んだ気がする内容だと思ったらそれは、
『ドルジェル伯の舞踏会』だった。
なんてことはない、ラディゲはこの作品に影響を受けているとのこと。

作品の背景として、世界的に自由恋愛で結婚するようになったのは、近現代になってからというのがポイント。
さまざまな文学で読み解くなら、西洋でも米国でも自由恋愛結婚が主流になったのは19世紀後半くらいから徐々にだと思われる。
日本でも、私の祖母は結婚式の時に初めて祖父の顔を見たと言っていたし、現在でも、インドでは親が決めた顔も見たこともない相手と結婚するのが常だ。
なお、同僚のインド人の女の子は、結婚してから旦那さんにぞっこんだし、とても幸せそうにしているので、親が決めた相手との結婚が悪いとは、一概には言えない。

閑話休題。
とにかく、主人公のシャルトル嬢は、父を幼くして失くし、厳格な母に育てられ、16歳のときに社交界デビュー。
母に勧められた相手(クレーヴ公)と、なんとなく結婚したのだった。
現代日本ならJKである。

親が娘の結婚相手を決める場合、女の子はとにかく若くして結婚する。

社交界が存在する時代ということは、貴族が自分の領地内で奴隷など下級階級の者に働かせており、貴族は働いたら負けという階級社会。
娘を持つ親は、できるだけ早く土地財産を多く所有している相手と結婚させたいわけである。

恋も経験したことのないJK、もとい、シャルトル嬢は、マリー・アントワネットよろしく、夫以外の見目麗しい男性に一目ぼれしてしまい、思わせぶりな態度で、アンジャッシュ的なすれ違いなどするうちに、犠牲者が出てしまう。

ここからネタバレ。


結局、プラトニックを貫く彼女だが、そうするしかなくなってしまったと思う。
「夫が亡くなったからあなたと結婚できるわ」
なんて、それではまるで、 ムツェンスク郡のマクベス夫人 になってしまう。こちらは不慮の死ではあるけれども。

最後になったがこの作品は、当初は匿名で出版された。
17世紀の当時は、女性が執筆するなんてはしたないことで、出版しても絶対に売れないと言われタブー視された時代。
たとえ良い作品であっても、著者が女性名だと読んでもらえないのだ。
かなり後期の19世紀になったシャーロット・ブロンテでさえ匿名だったのだから、ことさら苦労したことと思う。
この点は、『源氏物語』『枕草子』をタブー視しなかった日本との違いを感じる。女性の識字率も高かったしね。

17世紀フランス革命前の社交界,貴族の様子や文化を知れるという意味では、貴重な文献であり、たくさん出てくる実在の人物名を面白がるという楽しみ方もできる作品。