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孤独の(いなお)グルメレポート ~本郷三丁目の「麦」~

東京大学の本郷キャンパス、と言えば
「本郷三丁目」という駅が思い浮かびます。

私は関係者でもなんでもありませんが、
一・二年目は「駒場」
三・四年目は「本郷」と
東大のキャンパスが
分かれていることは知っていた。

本郷とは「上野駅」の西の不忍池を越えて、
さらに西に行くと現れる街です。

…ただ元々「本郷」という地名には、
「元々の村・町」「中心街」「センター」
などの意味にしか過ぎません。

「湯島本郷」(湯島の中心という意味)
その地名がいつの間にか
「本郷」部分だけ抽出されて
使われるようになった
んですね。
(中年世代だと、本郷と言えばつい
『キャプテン翼』のロベルト本郷の
名前をつい思い浮かべますが)

…さて、この本郷三丁目駅の近くに、
恐ろしいほど昭和レトロ感が満載の
秘密の喫茶店(カフェではない)がある。

本記事は、そのレポートです。
孤独のグルメ風に、どうぞ。

東大の「本郷キャンパス」は、
本郷三丁目の交差点から見て
北東の位置にあります。

本郷三丁目交差点の地下、真下には
「大江戸線」の駅がある。
もう一つ、「丸の内線」の駅もあり、
こちらは本郷三丁目交差点の南西。
ナナメに通る形で街を横切っています。

交差点から南に少し進み、
角を曲がって西に入った小道を進めば、
丸の内線の本郷三丁目駅の改札に行ける。

…くだんの喫茶店は、
その小道沿いにぽつんとあるんです。
ただし、地下に降りたところに。

駅前ですから、
人通りがたくさんある小道です。
でも、その入口の脇を通っていくのに、
なぜかみんなそこには気付いていない感じ…。
ただしよく見ればぽつぽつと
その入口に吸い込まれていく人も、いる。

まるでそれは、異世界への門…。

『千と千尋』の冒頭のアレです。
「見える人」にだけ見えるような、
そんな魔力を持った雰囲気の入口。

私は、だいぶ前に一回だけ、
入った記憶がありました。
その頃は、まだスマホやSNSなどは無かった。
いつ入ったか分からないほどの前です。
何で知ったのか、入ったのかもわからない。
でも、名前だけは何となく憶えていた…。

『名曲・珈琲 麦』

階段が、どんよりと地下に続いています。

…これ、降りていったら
戻って来られなくなるのではないだろうか?
そんな錯覚を覚えるような
雰囲気の年季の入った階段でした。
ディープダンジョン?
階段の下にはぎょろりと
モーツァルトの絵が置いてある。

昼間ならともかく、
夜だとちょっと怖くないか?

勇気を出して階段を降りると…。

そこはもう「昭和」なのです。
そうとしか言いようがない。

昔ながらの「喫煙可」のお店。
もわっとした空気が店内に流れていた。
階段下は右か左かに席が分かれており、
どちらに座っても良い感じです。

「お一人様の席」から
団体で座れる席まで色々ある。
階段の下、入口にレジがあり、
その奥の厨房では、
店主らしき方が忙しそうに
料理をつくっていました。

最初にお断りしておきますと、
「スマイルゼロ円」的な接客はありません。
過剰な愛想を振りまくことは、ない。

素っ気ない感じ。
私はタバコを吸わないのに、無言で
初期設定かのように灰皿を置いていく…。
来た者は拒まないが、店からは呼んでいない。
来た球を自分たちのスタイルでただ迎え撃つ。
自然体の接客…。

しかしこの店、少し調べてみますと
「1964年の創業」と出てきましたから、
良い意味での泰然自若スタイルで、何と
60年近くもやってきている。

学生さんをはじめ、この界隈の人たち、
私のようにふらりとやってくる人たち。
そんな無数の人の喉を潤し、
そのおなかを満たしてきたことでしょう。

価格も昭和です。安い!
珈琲一杯、300円。

これでやっていけているのか不安を覚える。
でも、事実、こうして60年、ここにある。
今後60年もやるんじゃないだろうか?

何となくセピア色に見える空間でした。
壁の近くにずらりと並んだ書籍や骨董品が
不思議と店内で調和している…。
私はそんな中、ランチ時間でもあったので
カレーライスの単品を頼んでみました。
お値段、600円。

ほどなくサラダとらっきょうと、
福神漬けと、なぜかソースがやってくる。
その後から「喫茶店のカレー」が来ます。

ココイチスタイルでもなく、
もちろんインドスタイル、
欧風スタイルでもない。
ええ、日本の喫茶店のカレーですが、何か?
と、こちらに訴えかけてくるような皿…。

口に入れると、甘口でした。
うん、うまい。
でも後から辛さがくる感じ。
なぜか、コクがある。

「名曲」と店名にあります通り、
店内にはクラシック音楽が
ひたすら流れています。

どこかで聞いたことはあるけれど
曲名がすぐには思い浮かばない感じ。
ずっと無心で聞いていられるような…。

…ここは本当に令和なのか?
大都会の東京なのだろうか?

あの階段を降りてきた時、私は
時空間を超えてしまったのではないか?

そう思わせるような
奇妙な「心地良さ」がありました。

店側は最低限の接客、お客を放置気味。
いつまでもいていい。のんびりできる…。
でもちょっと空気が煙いし、
一人なら食べたらすぐに出たほうが
良いような雰囲気もある。
不思議なお店です。

団体さんが数人で来ておしゃべりしたり、
ただ一人でサッと食べに来てすぐ出たり、
研究の合間に珈琲を飲みに来て考えたり、

お客のどんな球でも
肩ひじ張らずに打ち返してくれる、

そんなトスバッティングなお店なのでした。

支払いを済ませ、店を出た。
モーツァルトに見送られて階段を昇る。
昭和から令和に戻ります。
…小道では何事も無かったかのように
現代人たちが歩いていました。
明らかに流れる時間が、違う。

あの空気は何だったのだろう?
まるで白昼夢を見たかのような、
ちょっと不思議な感覚に
私は囚われたのです。

『名曲・珈琲 麦』。

本郷三丁目付近には学生街らしく、
小粋なカフェや料理店、
リーズナブルな専門店なども
たくさんある。あるのですが、

このお店の独特の雰囲気には
他にはない魔力があります。
何しろ、お値打ち価格です。
「ス〇バ」や「ド〇ール」では
逆立ちしても味わえないような、
どろりとした濃密な空間と空気…。

最後に、まとめます。

本記事では丸の内線本郷三丁目駅の付近の
「喫茶店」のレポートをしてみました。

もし、読者の皆様も
何かの折に近くを通りかかりましたら、

ぜひ魔力で隠されている入口を見つけ出して
昭和へと降りていってみて下さい!
大丈夫、取って喰われはしませんよ?(たぶん)

※「名曲・珈琲 麦」の
食べログのページはこちらから↓

※他の方もレポートされています。
よくわかります。
つい、自分なりに、自分の感覚で
レポートしたくなるお店なんですよ。
モーニングやプリンも大人気のようです。

合わせてぜひどうぞ!

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