味を付ける人としてのアレンジャー
『arrange』には、さまざまな意味があります。
『アレンジ』にも、さまざまな意味が、ある。
元々、日本語ではない言葉であるがゆえに、
かなり多義的に使われているのです。
(「キャリア」という言葉と同じですね)
本記事は、arrange(アレンジ)について。
…全部、使うことができますよね。
しかし、それぞれの意味は微妙に違ってくる。
①配置をする
②手配をする
③編曲をする
④再構成する
日本語圏内ではこの中でも③④の意味、
すなわち「手を加えて変える」という
意味で、アレンジという言葉を
使うことが多い、と思われます。
ここで、そもそもの原語
『arrange』について考えていきましょう。
英語の「arrange」の意味を調べると、
「用意をする」「協定を結ぶ」などの
意味も出てくるんです。
語源をたどっていくと、古いフランス語の
『arrangier』になる。
これは「きちんと並べる」という意味。
辞書風に書くと、以下の通りですね。
(小学館プログレッシブ英和中辞典より)
例えば、以下の英文があるとします。
皆様はどう訳しますか?
スペシャルデリバリー、
つまり、速達便を「アレンジ」した…。
…「手を加えて変化させる」だと、
ちょっと犯罪の匂いがしますよね。
そう考えますと、明日には届く、だから
『速達便を「手配」しましたので、
明日には届くかと思います』という意味。
ここでは「手配する」の意味です。
そう、英語のarrangeは
「アレンジ」的に「手を加えて変化させる」
という意味だけでなく、
「手配する」「配置する(ちゃんと並べる)」
などの意味で使われることも多いんですよ。
さて、もう少し多方面から考えます。
アレンジの「類義語」、似たような言葉は?
…「リメイク」「カバー」あたりが
思いつくかと思います。
リメイクは、reのmekeですから、
「もう一度作る」ですよね。
全体を一から作り直す、というニュアンス。
アレンジとは、ちょっと違います。
◆アレンジ:一部を付け足して変化させる
◆リメイク:全体を一から作り直していく
カバーはどうでしょうか?
野球の守備の「カバー」とか、
スマホの「カバー」などにも使われます。
若い音楽グループなどが有名歌手の歌を
「カバーする」というケースにも使われます。
◆アレンジ:一部を付け足して変化させる
◆カバー:楽曲を再構成する、補う、守る
…いずれも「アレンジ」とは
イメージが変わってきますよね。
楽曲の例で言えば、
アレンジは、元の楽曲を活かしつつも
自分たちの音楽性を活かして
「こんな表現もあるんだぜ!」と
世に問うていくようなイメージ。
リメイクは、元の楽曲はあるにしても
コンセプトなどを変えて、
「もう一度作り直しました!」と
違うものとして出していくイメージ。
カバーは、元の楽曲を尊重して
できるだけその意図を汲みつつも
「補いつつわかりやすくしました!」と
路線をつないでいく、守るイメージ。
もちろんこれらは私なりの表現なので、
皆様におかれましては
違うイメージかもしれません。
ただ、アレンジ、リメイク、カバーは
若干、意味が違う、というのはある。
かつ、アレンジとarrangeでも
意味が変わってくる…。
では、これらの多義性を踏まえて、
まとめていきたいと思います。
本記事では、アレンジとarrangeの違い、
アレンジの類義語、について書きました。
…私は、「SNSでの発信」も、
広義での「アレンジ」だと思うのです。
例えば、何か伝えたいことが、あるとする。
それを、自分なりに「アレンジ」して
表現していく。
それが、発信、なのではないでしょうか。
当然ながらそこには、
自分なりの価値観、取捨選択、編曲、
そういったものが入ってきます。
いかに無味乾燥に見えても、必ず入る。
「こんなところに行きました」
「こんなものを食べました」
「こんな商品が出されました」
もちろん元の事実、客観的に動かせないこと、
誰もが認める事実、
そういったものをありのまま、素材そのままで
表現する方法も、もちろんあります。
ずらずらと整然と並べる。
ただ、客観的に動かせないもの、
誰が見ても認める事実、という表現に
しようとすればするほど、
無味乾燥な発信になりがちなことも、
また事実です。
(事実そのものが凄い場合は
この限りではありませんが…)
要するに、味気ない。
買ってきた食材を、そのまま食卓に出す
ようなものです。
そこで調理、味付けをします。
アレンジする。提供法を変える。
「私はこう思ったんだ!」
「こんな表現もあるんだぜ!」と
世に問うていく…。
もちろんアレンジが過ぎてリメイクになれば
全くの「別物」となるでしょう。
元の事実もすべて消え失せるようなら
「フィクション」(架空のもの)に
なっていきます。虚報、にもなる。
逆に、元の情報を色濃く残すのならば
アレンジ、というより
「カバー」になるかもしれません。
何が言いたいのか、というと、
逆説的ですが、「加工」を繰り返すことで
自分の「オリジナル」「味付け」も
見えてくる、ということが言いたいんです。
私は「たとえ」や「引用」を多用します。
これも、一つの加工ですよね。
それが、自分の「味」になる、と思っています。
「ヒストジオ風味」「いなお風味」です。
ただし、あまりに行き過ぎると、
アレンジやリメイクを通り越して
フィクション、果ては妄想、虚報に
なってしまう危険性もあります。
そういう危険性を踏まえつつ、
料理において
人の料理を食べるばかりではなく
自分で調理してみれば
味付けの具合がわかっていくように、
発信において「加工」の具合を色々と
試してみるのは大事だ、とも思うのです。
そう考えて、私は「フィクション」の
味付けの小説を書いてみたりもしています。
(丸ごとフィクションではなく
現実のトピックも取り混ぜたりしますが…)
さて、読者の皆様は、いかがでしょうか?
どのくらいアレンジ、味付けをしていますか?
配置? 手配? 編曲? 再構成?
最初からリメイク、それともカバーですか?
全部オリジナルですか? それともコピー?
どのような発信を、されていますか?
※「ドラゴン桜」の桜木先生風のアレンジ記事もぜひ↑