最果タヒ原作 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
私が最果タヒさんを知ったのは、詩ではなく、『好きの因数分解』というエッセイだった。
取り上げることも、切り取り方も、文章も面白いから雑誌の連載を読んでいて、そこで著者は中原中也賞を受賞した、私より若い詩人だとプロフィールで知る。
その後、気になって彼女の詩の本を購入して読むんだけど、意味として繋がらなかったとしても、瞬間に涙が出る、突然に刺すような言葉が詩の中に固く埋められているため、時間のあるときにしか読めなかった。
最果タヒさんの詩をベースにできたこの映画。
詩の世界観を、正しく映画にしてくれていて、嬉しくなる。
台詞に詩をしっかり当てて背景になじませたところ、この世の理不尽についてはアニメーションの挿入で表現したところ、トーンは一定で役者の演技を無駄に感情的に演出しなかったところ。
そう、固い。
石井裕也監督はじめ制作陣が、私と同じことを最果さんの作品に感じてるな、と勝手に思わせてくれたところが、とてもよかった。
逆に詩を読んでない方には、よくわからん映画かもです。
最果さんの詩には、生まれて・生きて・死んで、生まれて・生きて・死んで、と繰り返す言葉のタイルの間にある、「・」の部分に、誰か好きな人、好きなもの、そして自分に対して、真っすぐで純粋な愛情とか愛着が溢れている。
破滅的ではなくて、むしろ生きることに対してすごくポジティブ。
生きていますか?
お元気ですか?
映画の冒頭に繰り返し出てくるこの台詞で、すべてが十分に思えてくる。
あと、映画としてのテイストとか完成度という意味で、衣装のスタイリングがよかった。役柄の個性はもちろん、若さだったり、役者の身体的な良さを引き立てていたかと。
そして、池松壮亮の演技は、すごくよかった…。うまい。
もっと、観たい、と思った。
何となく、ご本人は役柄とは全く違うタイプの方なのでは、と思うほど。
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