心理学講座Ⅱ 「伝播バイアス」
「人とモノとのつながり」は目に見えなくても消えない
ペンシルベニア大学のポール・ロジンと共同研究者たちは、被験者に「自分に近しい人の写真」を持ってくるよう求め、それをダーツのまとの中央ピンで留めて、矢を投げるよう促す実験を行ないました。
母親の写真がダーツの矢で穴だらけになったとしても、実際には母親自身が痛みを感じるわけではありません。それなのに被験者たちのためらいは大きかったのです。
彼らのダーツの成績は、写真のないまとを使ったグループよりも成績がずっと悪かったのです。
「人とモノとのつながり」は、たとえそのつながりずっと前に消滅していても、あるいは写真のように非物質的なものに過ぎなくても軽視できるものではありません。
物への愛着もそうです。自分が所有しているものの価値が高く感じることは所有効果と呼ばれています。
部屋の片隅にずっと履いていないナイキのスニーカー。なかなか手放すことができず、仕方なくフリマアプリで高い金額で売りに出している人がいます。
車や家となれば私たちは市場価格以上に高い価値をつけてしまいがちです。しかしこれは大きな勘違いです。いちどこれらの高額なものを手にしてしまえば、購入した瞬間にその価値は3分の2以下になってしまいます。よほどのものでない限りは購入した瞬間に価値が下がってしまうのです。
投資だと思いセールスマンのうまいセールストークに引っかからないように気をつけましょう。私たちが高く価値を感じているものは、実際には大した価値などないものがほとんどなのです。
経済的な価値は一見合理的に価格が決まっていると思われがちですが、実際にはそれほど合理的ではなくデタラメな場合が多いのです。私たちが正しく判断するためには欲望と言う名の感情に振り回されないことが大切なのです。
参考・引用文献
Think Smart /ロルフ・ドベリー/サンマーク出版