「いちめんのなのはな」で翻作学習
山村暮鳥の詩「風景 純銀もざいく」の第一連は、次のようになっている。いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな
三つの連から成るこの詩の第一連は、「いちめんのなのはな」が六つ並んだあとに、「かすかなるむぎぶえ」という一行が来て、再び「いちめんのなのはな」に戻って終わる。
第二、三連も同様の構造で、うしろから二行目だけが
「ひばりのおしゃべり」、
「やめるはひるのつき」
になる。
この詩を素材にして、例えば、各連のうしろから二行目を、
「そらがかがやく」
「そよかぜがふく」
「ちょうがまう」
などにかえると、原作とは異なる詩が生まれる。
「いちめんのなのはな」を、
「まんかいのさくら」または「満開の桜」
にかえ、
各連のうしろから二行目を、
「あふれるえがお」または「あふれる笑顔」、
「わかれるなみだ」または「別れる涙」、
「であうよろこび」または「出会う喜び」
などにかえれば、新しい詩がいくつも生まれる。
季節を夏にかえて、
「いちめんのひまわり」
「かがやくたいよう」
などとすることもできる。
さらに、この平仮名だけで書かれている詩の表記を、漢字仮名交じり表記にかえることもできる。そうすると、例えば、
いちめんのなのはな → 一面の菜の花
やめるはひるのつき → 病めるは昼の月
というようになって、詩の味わいががらりと変化する。
それが、総平仮名表記と漢字仮名交じり表記とを比較する学びにもなる。さらに、原作が採用した総平仮名表記の見事さを再認識することもできる。
それだけでなく、「やめる」が「止める」ではなくて「病める」であることを確認することができる。
その際、辞書を利用すれば、辞書利用の学習にもなる。
拙著『国語を楽しく』第4章「翻作のすすめ」参照。
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