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大乗仏教 空の思想

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【大乗仏教】古代インドの論理学

【大乗仏教】古代インドの論理学

古代インドの論理学について、見ていきたいと思います。前回の記事と同じく「火と煙の関係」を例文として使用していきます。

○ニヤーヤ学派の五分作法の例

古代ギリシア由来の三段論法に外見上は似ていますが、西洋論理学が概念の外延間の関係に主眼を置くのに対し、インドの論理学は基体(例えば山)と属性(例えば火、煙)との関係に着目して分析を行う点に大きな違いがあると言えます。

喩例(喩)の同喩が大前提に該

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【大乗仏教】中期中観派

【大乗仏教】中期中観派

龍樹の論理が古代インドの論理学(ニヤーヤ学派やディグナーガの論理学)で表すことのできない異質的なものであったことは、五世紀以後の中期中観派にとってはかなり困ったことになっていました。この時代のインドは論理学と認識論が哲学の主流となってきた時代でもありましたので、中観派も自己の哲学思想を主張して他派と論争するためにも、その教義を論理的に発表しなくてはならなかったのです。

中期中観派の中では帰謬論証

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【大乗仏教】清弁の自立論証

【大乗仏教】清弁の自立論証

中期中観派の自立論証派である清弁(バヴィヤ)の理論化例を見ていきます。清弁は陳那(ディグナーガ)の仏教論理学を自身の中観哲学の中に、ほぼ全面的に取り入れました。陳那の仏教論理学については、以下の記事をご参照ください。

清弁は帰謬式という間接論証ではなく、陳那の自立論証式によって中観の基本的立場を定言的に論証しうると考えたのです。それに対して、月称(チャンドラキールティ)はむしろ新興の論理主義と対

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