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まずは学んでみる
なにかを習う、学ぶということは、始める前より確実に知識が豊富になるということ。日本舞踊自体がうまくならなかったとしても、得るものはあるんです。
「定年後」の学び方10か条 』(中公新書ラクレ)
学ぶからには結果を出さなければ気が済まない?
「社会人大学院に通っています!」と笑顔で人様にお話をすると、よく聞かれます。
「大学院に行って何するの?」
「今さら、何を勉強するの?」
ここまではっきり言わないまでも、(ふーん。たいへんそうだねー。で、何してるの?)という顔だけされて、大学院の話は終わるということもあります。
おそらく、多くの方は、学ぶことは何かの結果に結び付けなければならないと考えているのでしょう。たとえば、英語を勉強するからにはTOEICで800点取る、ゴルフスクールに行ったら100切りをする、ピアノを習ったら人前でショパンを弾けるようになる、などなど。
学ぶ過程で得られるものもある
もちろん、学ぶからには結果を出すことも大事であり、結果を出さなければ面白くないというのもわかります。
でも、学びのいいところは、何か自分が目指した結果を得られるということだけではありません。結果に至る過程でも得られるものがあり、そこに学びの本質があります。
今、私は社会人大学院の修士2年目で、間もなく修士論文を書き上げて提出しなければなりません。この修士論文という「結果」はそれはそれで大切なのですけれども、社会人大学院に通って約1年半たった今振り返ってみると、この結果を求める過程の中で、確実に身に付いた能力がいくつかあります。
定期的に論文や書籍を読む能力
論文や書籍を読んで文章にまとめる能力
論文を読んで、「この発想は面白そう!」と思える能力
教授が楽しそうに話をしているのをみて、「確かにその話は面白いかも!?」と思える能力
ゼミの仲間を集めて、懇親会や勉強会を開催する能力
ゼミの仲間の研究の状況をさりげなく聞き出す能力
何かを得ようと思ったら、まずは始めてみる
これらの能力のうち、論文や書籍を読む能力や、文章にまとめる能力は、大学院で修士の学位を得るという「結果」にわりと直結するものです。しかし、論文を読んで「この発想は面白そう!」と思える能力を身に付けようと大学院入ったわけではないですし、そんな能力を身に付けても何かに直接役に立つわけではありません。
ゼミの仲間と一緒に何かをやるという能力も、もちろん社会人大学院で得るべき必須の能力というわけではありませんし、ゼミの仲間との関係構築をしなくても大学院は修了できます。
でも、上に書いた能力は、この1年半で確実に身についたなと自分の中で思える能力です。こんな能力を身に付けようとは入学時は全く思っていなかったのですから、大学院に通ったことの思わぬ副産物であるといえます。
何かを学ぼうと思ったときに、一つの結果を得ようとすることは大変重要です。ですが、学びのいいところは学ぶ前には思いもよらなかったものを得ることができることなのですから、何かを学ぶときは肩肘張らずに、まずははじめてみるのが良さそうです。