【生理で下腹部痛や刺すような痛み】中医婦人科学

今回は「気滞血瘀(きたいけつお)」のタイプについて、月経痛に関連する詳細な内容を詳しく解説します。

気滞血瘀の基礎理論

「気滞血瘀」は中国医学において非常に重要な概念であり、特に月経痛(生理痛)やPMS(生理前症候群)に関連します。気滞とは気の巡りが滞ること、血瘀とは血液の流れが滞ることを指します。これらが同時に起こることで、身体全体のエネルギーの流れ血液の循環が悪くなり、痛みや不調を引き起こします。

気滞(きたい)

  • 気滞は、体内の「気」(エネルギー)の流れが何らかの原因で滞ってしまうことを意味します。気の流れが滞ると、身体全体が重く感じたり、疲れやすくなったり、感情的なストレスが引き起こされることがあります。

  • 特にが関与しており、肝は気の流れを管理する役割を持っています。肝がうまく機能しないと、気が滞り、体内のさまざまな不調が発生します。肝はまた、感情、特に「怒り」と深い関係がありますので、感情の変動が気滞を引き起こしやすいです。

血瘀(けつお)

  • 血瘀は血液の流れが滞ってしまう状態を指します。血液が滞ることで、身体の隅々に必要な栄養が届かなくなり、酸素や栄養素が不足し、痛みや不調が現れることが多いです。

  • 血瘀が進行すると、血液が凝固して塊(血塊)ができることがあります。これが月経痛に関連するとき、血の塊として排出されることがあります。血の塊が出ることで、痛みが和らぐことが多いため、月経中に血塊が出ることは血瘀が解消されるサインと考えられています。

気滞血瘀が引き起こす月経痛の特徴

気滞血瘀による月経痛は、以下のような特徴があります。

1. 月経痛の出現タイミング

  • 月経前や月経開始から1〜2日目に痛みが強くなる: 月経の初期に痛みが強く出るのが特徴です。特に**月経前(PMS)**に痛みが出ることが多く、これは気滞や血瘀の影響を受けやすい時期だからです。

2. 痛みの部位と性質

  • 下腹部の片側や脇腹に痛みが集中する: 気滞血瘀による痛みは、下腹部の両脇や片側にピンポイントで現れることがあります。痛みの性質としては、張ったような重苦しい痛みが多いです。

  • 刺すような痛みが出ることも: 血瘀が強い場合、痛みが鋭く、刺すような感覚になります。この刺すような痛みは、血流が滞って血液が塊になっているときに感じやすい痛みです。

  • 血の塊が出ると痛みが楽になる: 月経中に血塊が出ると、痛みが軽減することがあります。これは、滞っていた血液が排出されることで、血の巡りが改善され、痛みが和らぐためです。

3. PMSの症状

  • 月経前に便秘や胃腸の不調: 気滞が胃腸に影響を与えると、便秘や消化不良、ガスが溜まることが多くなります。また、精神的なストレスが原因でイライラ不安感も強くなり、身体的な症状を悪化させます。

治療法とアプローチ

気滞血瘀による月経痛を治療するためには、気血の巡りを良くすることが基本です。これには、以下の方法があります。

1. 気血を巡らせる

  • 漢方薬:

    • 冠元顆粒(かんげんかりゅう)や血府逐瘀丸(けっぷちくおうがん)などは、気と血の流れを改善し、滞りを解消するために使用されます。これらは、気滞や血瘀を改善し、月経痛を和らげる効果があります。

  • 鍼灸治療: 鍼灸は気と血の流れを改善し、特にに対するアプローチが有効です。鍼を使って滞りを解消し、痛みを軽減します。

2. ストレス管理と養生

  • ストレスをためない: 気滞血瘀の原因はストレスに大きく影響されるため、感情のコントロールが非常に重要です。深呼吸ウォーキングヨガなどで、気の巡りを良くし、リラックスすることが大切です。

    • 深呼吸を意識的に行うことで、気の流れが改善され、ストレスの解消に役立ちます。

    • ウォーキングや軽い運動も、気の巡りを良くし、血流を促進するために効果的です。

  • 「出してから入れる」: 滞っている気や血をまず排出し、体内に新たな気や血を入れることが重要です。気滞や血瘀が解消されると、新しいエネルギーが循環しやすくなります。

3. 食事と養生法

  • 食事療法: 気滞血瘀の改善には、血を活性化し、気を巡らせる食材が有効です。例えば、玫瑰花(まいかいか)(バラの花)や山査子(さんさし)(サンザシ)は、気を巡らせ、血流を改善します。また、ミントジャスミン茶もリラックス効果があり、気の滞りを和らげます。

4. アロマセラピーと芳香療法

  • ネロリ(オレンジ花)やオレンジフラワー: 気滞血瘀には、香りを使って気の巡りを促進することも有効です。これらのオイルは、気を巡らせる効果があり、特にPMSや月経痛に有効です。

  • フランキンセンス: 精神的な緊張を和らげ、気の流れを改善します。リラックスするために、アロマディフューザーを使用するのも良い方法です。

まとめ

「気滞血瘀」による月経痛は、肝の不調やストレス、気の滞り、血液の流れが悪くなることが原因です。月経前や初期に痛みが強く、痛みが血の塊とともに和らぐことが特徴です。治療法としては、気と血の巡りを改善する漢方薬や鍼灸、ストレス管理、そしてアロマセラピーを活用することが有効です。また、食事や養生法にも気をつけることで、痛みを和らげ、健康を改善することができます。

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