【月経痛の仕組み(西洋医学)】中医婦人科学
月経痛の西洋医学的なメカニズムについて、解説します。
※今回は中医学の話はありません。
月経痛の原因とメカニズム
月経痛(生理痛)は、経血が子宮から体外へ排出される過程で生じる痛みです。西洋医学では、痛みの主な原因として「プロスタグランジンの過剰分泌」が挙げられますが、他にも「子宮口の狭さ」「冷え」「ストレスとホルモンの乱れ」などが影響するとされています。
1. プロスタグランジンの過剰分泌
プロスタグランジンとは プロスタグランジンは、細胞膜に含まれる「アラキドン酸」が、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の作用で生成される脂質化合物の一種です。特に月経時には、子宮内膜から大量に分泌されることで知られ、子宮の筋肉を収縮させ、経血を排出するために重要な役割を果たします。
痛みが生じるメカニズム
プロスタグランジンの作用:子宮筋が収縮すると血流が一時的に遮断され、酸素が不足します。この酸欠状態が痛みの原因となります。
過剰分泌:プロスタグランジンが過剰に分泌されると、子宮筋が強く収縮し、強い痛みやけいれんを引き起こすだけでなく、下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気などの症状も現れます。
発痛物質との関連:プロスタグランジンは「ブラジキニン」という発痛物質の効果を増強する働きがあり、痛みがさらに強まります。
2. 子宮口の狭さ
月経痛との関係 子宮口が狭いと、経血の排出がスムーズに行えず、圧力が高まるため痛みが生じやすくなります。特に若い女性や出産経験がない女性では子宮口が狭いことが多く、経血の通り道が狭いことで痛みが発生しやすいと考えられます。
出産後の変化 出産を経験すると子宮口が広がるため、経血が排出されやすくなり、痛みが軽減される場合が多いです。このように、出産経験が月経痛の軽減に寄与することもあります。
3. 冷えによる血流障害
冷えの影響 冷えは血流の滞りを引き起こし、血液が十分に巡らないため、子宮周りの筋肉が硬直しやすくなります。冷えによって血管が収縮し、血流が滞ることで、痛みが増幅されることがあります。
冷えの原因と対策 体を冷やすような生活習慣(冷たい飲食物の摂取、寒さにさらされるなど)が冷えを悪化させ、月経痛の引き金となることがあります。体を温める食事や生活習慣の改善が、月経痛の予防や緩和に有効です。
4. ストレスとホルモン、自律神経の乱れ
ホルモンの乱れ ストレスは、ホルモンバランスを乱し、自律神経の調整がうまくいかなくなります。特に、月経周期を調整するエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンはストレスの影響を受けやすく、ホルモンのバランスが崩れると痛みが強まります。
自律神経の乱れ ストレスが原因で自律神経が乱れると、交感神経が優位になりやすくなります。交感神経が優位になると、血管が収縮し、血流が悪くなりやすいです。これが子宮の血流を滞らせ、痛みの原因となります。
炎症と月経痛
炎症反応としての痛み プロスタグランジンの分泌による子宮収縮は、炎症反応と似たメカニズムで痛みを生じさせます。月経痛は、子宮内膜が剥がれ落ちる際に発生する「痛み」「熱」「腫れ」の三大症状を伴い、これは炎症反応の典型です。
プロスタグランジンの増加と炎症 月経時に子宮内膜が損傷を受けると、リン脂質がアラキドン酸に変わり、COX酵素によってプロスタグランジンが生成され、痛みや炎症が引き起こされます。この一連の反応が月経痛の原因のひとつとして考えられます。
月経痛が病的になるポイント
一般的な月経痛は、軽度の痛みや不快感で済むことが多いですが、痛みが強く日常生活に支障をきたす場合は、以下のような疾患が潜んでいる可能性もあります。
子宮内膜症:子宮内膜が子宮外に発生し、異所性に増殖することで強い月経痛が生じます。
子宮筋腫:筋腫によって子宮が変形することで、経血がスムーズに排出できず、痛みが生じやすくなります。
骨盤内炎症性疾患:骨盤内で感染が発生すると炎症が広がり、月経痛が悪化することがあります。
これらの疾患が疑われる場合は、医師による診断と適切な治療が必要です。
まとめ
月経痛の原因としては、プロスタグランジンの過剰分泌や子宮口の狭さ、冷え、ストレスによるホルモンや自律神経の乱れなどが関与しています。痛みを軽減するためには、これらの原因に対処することが重要です。