【肝が弱る!】肝血虚(かんけっきょ)とは?肝の前提知識③
肝血虚(かんけっきょ)について
中医学における「肝血虚」とは、肝が十分に血を蓄えることができない状態を指します。肝は血を貯蔵して全身に供給する役割を持っており、血の不足は全身に影響を及ぼします。肝血が不足すると、体の隅々まで血液を供給できなくなり、多くの不快な症状を引き起こします。
肝血虚の主な症状
目の不調:
肝は目と密接な関係にあります。肝血が不足すると、目に十分な血液が届かず、視力の低下、目のかすみ、疲れ目、乾燥、痛みなどが生じます。重度の場合、夜盲症(暗い場所で視力が低下する症状)が現れることもあります。
爪の異常:
爪は肝の血の状態を反映します。肝血虚になると、爪が白っぽくなったり、薄くて割れやすくなったり、艶が失われたりします。これらは血液が十分に供給されていないサインです。
筋肉のけいれんやこり:
肝は筋肉や腱の健康も支配しています。血の不足により筋肉が栄養不足となり、こむら返り(足がつる)、筋肉のけいれん、肩こりなどの症状が出ます。特に夜間に足がつる現象は、肝血虚が原因であることが多いです。
月経の不調:
女性の場合、肝血虚は月経に影響を与えます。月経が遅れたり、量が少なかったり、無月経になることもあります。また、血が不足しているために月経痛がひどくなることがあります。
精神的な不安定:
肝血は精神的な安定にも関わります。肝血が不足すると、イライラや不安感、集中力の低下、睡眠障害(夢を多く見る、眠りが浅いなど)が現れます。これは精神が安定するために必要な血が不足しているためです。
肝血虚の原因
過度のストレス:
長期間の精神的ストレスは、肝の疏泄機能を妨げ、肝の血を消耗させます。これにより、肝血虚が発生します。
過労や睡眠不足:
過労や睡眠不足も肝血を消耗する大きな要因です。夜間に肝は血を補充するため、睡眠が十分でないと肝血が十分に補充されません。
不適切な食生活:
鉄分や栄養が不足している食事は、肝血を養うのに必要な材料が不足し、肝血虚を招く原因となります。
慢性病:
長引く病気は血を消耗し、肝血虚を引き起こすことがあります。
肝血虚の治法
肝血虚の治療は、主に「養血(ようけつ)」と「疏肝理気(そかんりき)」を組み合わせて行います。
1. 養血(ようけつ)
目的: 血を補い、肝の機能を正常にすることです。
方法: 血を養う生薬や食材を用いて治療します。代表的な生薬として、当帰(とうき)、熟地黄(じゅくじおう)、白芍(びゃくしゃく)、阿膠(あきょう) などがあります。
効果: これらの生薬は血を増やし、血液の循環を良くすることで、筋肉や爪、目などの不調を改善します。
2. 疏肝理気(そかんりき)
目的: 気の流れを良くし、肝の疏泄機能を高めることです。
方法: 肝の機能を調整することで、気の流れを改善します。代表的な生薬として、柴胡(さいこ)、薄荷(はっか)、香附子(こうぶし) などがあります。
効果: 疏肝理気は気の滞りを解消し、ストレスを緩和することで精神的な安定を促します。また、これにより血の循環も改善されます。
具体的な治療法
漢方薬:
肝血虚の治療には、四物湯(しもつとう) や 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) などがよく使われます。これらは血を補い、肝の機能を助ける漢方薬です。
逍遥散(しょうようさん) もよく使われ、これは肝血を補いながら、気の巡りを良くしてストレスを緩和する効果があります。
食事療法:
肝血を養う食材を積極的に摂取します。特に、レバー、ほうれん草、黒ごま、なつめ などが推奨されます。これらは鉄分やビタミンが豊富で、血を補う効果があります。
ライフスタイルの改善:
十分な睡眠をとることが重要です。夜10時から深夜2時は、肝が血を補充する時間帯とされています。この時間帯にしっかりと睡眠をとることが、肝血虚の改善に役立ちます。
※詳しくは中医基礎理論にて子午流注という考え方があります。適度な運動も血液の循環を良くするのに効果的です。ヨガやストレッチなど、リラックスできる運動が推奨されます。
ストレス管理:
ストレスを溜め込まないように心がけます。リラクゼーション法や趣味の時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
まとめ
肝血虚は、血液が不足することで体にさまざまな不調を引き起こす状態です。養血を中心に治療しつつ、疏肝理気を行うことで、気血の流れを改善し、体と心のバランスを整えます。日常生活の中で適度なストレス管理や睡眠、栄養補給を心がけることで、肝血虚の予防や改善が期待できます。
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