【生理痛の痛みの原因と例え】中医婦人科学

今回は中医学における生理痛・月経痛(痛経)の考え方を解説します。

月経痛の中医学的な捉え方

中医学では、月経痛がない状態が理想とされ、痛みを伴う月経を「痛経」と呼びます。痛経は、「不通則痛(ふつうそくつう)」「不栄則痛(ふえいそくつう)」の2種類に分けられ、それぞれに異なる治療法が適用されます。中医学では、月経痛を単なる症状としてではなく、体全体のバランスの乱れと見なし、弁証論治によって根本原因を探り、治療します。

※中医学的痛みは根本的には結構単純で2パターンに分ければよい(弁証でいうところの虚実)生理痛以外でも使えます。あとは寒熱で分ける。西洋医学の痛みの種類分けはとても複雑で難しい。

月経痛の2つのタイプ

1. 不通則痛(ふつうそくつう)

「通らないから痛い」という意味の不通則痛は、血や気の流れが滞っていることで痛みが生じるタイプです。これが原因の月経痛は「実証」と呼ばれ、体内の気や血がスムーズに流れないため、痛みや凝り、重さを感じることが特徴です。

  • 原因

    • 瘀血(おけつ):血流が滞っている状態。子宮周辺の血液の巡りが悪いため、排出がスムーズに行かず、痛みや凝りを引き起こします。

    • 気滞(きたい):気の流れが滞っている状態。特にストレスや緊張が原因で、気の巡りが悪くなると、血も同時に滞ることが多く、痛みが発生します。

  • 特徴的な症状

    • 月経血が暗赤色で、血塊が含まれる。

    • 下腹部の締めつけられるような痛みがあり、血塊が排出されると痛みが和らぐことがある。

    • 精神的な緊張やストレスの多い人に多く見られる。

  • 治療アプローチ

    • 瘀血除去気の巡りの改善を行います。瘀血を取り除くためには「活血化瘀(かっけつけお)」という方法で血行を促進し、気滞には「理気薬(りきやく)」という気の流れを改善する生薬を使います。

    • 代表的な処方例は、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や逍遥散(しょうようさん)などがあり、血流改善や気の巡りの調整に用いられます。

2. 不栄則痛(ふえいそくつう)

「栄養が足りないから痛い」という意味の不栄則痛は、エネルギーや栄養が不足していることで痛みが生じるタイプです。このタイプは「虚証」と呼ばれ、気や血が不足していることで痛みが生じます。特に体が虚弱な人や、慢性的な疲労、栄養不足がある人に多く見られます。

  • 原因

    • 気虚(ききょ):エネルギー不足の状態。体を巡るエネルギーが不足しているため、痛みに耐える力が弱くなります。

    • 血虚(けっきょ):血液が不足している状態。血の不足により子宮が栄養不足になり、痛みを引き起こします。

  • 特徴的な症状

    • 月経血が薄い赤色で、量が少ない。

    • 月経中に強い疲労感があり、顔色が青白く、めまいや息切れがあることが多い。

    • 冷えや手足の冷感、集中力の低下が伴うこともあります。

  • 治療アプローチ

    • 気血を補うことで痛みを軽減します。気虚には「補気薬(ほきやく)」、血虚には「補血薬(ほけつやく)」が用いられ、体全体のエネルギーと栄養を増強します。

    • 代表的な処方例は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)四物湯(しもつとう)系統など、血と気を補うために用いられます。

痛みの程度による治療の選択

月経痛の程度によって、漢方治療か養生法(セルフケア)で対応するかが変わります。

  • 痛み止めが必要な場合

    • 痛みが強く、鎮痛剤を毎日2錠以上服用するような場合には、漢方薬で根本的な体質改善を行う方が効果的です。体質に合わせた処方で症状を緩和し、根本治療を目指すと早く改善されることが多いです。

  • 軽度な場合

    • 痛み止めを1日1錠程度で何とかなる場合は、食事や生活習慣の改善、軽い運動、温めるなどの養生法(セルフケア)で痛みが和らぐことが期待できます。

ピルや鎮痛剤と中医学的なアプローチの違い

  • ピル:ホルモンバランスを調整して月経痛を軽減することが可能ですが、ピルの長期使用で自然な月経周期が抑制され、ホルモンの不調が生じる場合もあります。中医学的には、ピルによるホルモンの抑制で体調不良を訴える人も多く、ピルの副作用による不調も相談ケースとして多く見られます。

  • 鎮痛剤:一時的な痛みの緩和には効果的ですが、痛みの根本原因にはアプローチできません。中医学的には、痛みの原因が瘀血や気血不足などであれば、漢方薬で根本的な体質改善を行う方が長期的に効果的です。

  • 中医学のアプローチ:月経痛を「不通則痛」か「不栄則痛」に分けることで、その人に合った根本的な治療を行います。中医学では、痛みが発生する根本原因に対処するため、月経痛だけでなく、体全体のバランスも整え、他の症状や体質改善も目指します。

月経痛の根本治療に向けた養生法

中医学では月経痛に対する予防と緩和のために、日常生活で取り入れられる養生法も推奨されます。

  1. 体を温める

    • 冷えは瘀血や気滞を悪化させやすいため、温かい食べ物や飲み物、入浴や温熱療法で体を温めるようにします。

  2. ストレス管理

    • ストレスは気滞を引き起こしやすいため、リラックスできる習慣を持ち、気の巡りを良くすることが大切です。深呼吸、ヨガ、瞑想などが効果的です。

  3. 栄養バランスを整える

    • 血虚を防ぐために、鉄分やタンパク質の多い食事を心がけ、血を補う食材(レバー、黒豆、赤身肉など)を積極的に摂取します。

  4. 適度な運動

    • 軽い運動は血流や気の流れを促進し、瘀血や気滞を予防する助けとなります。

まとめ

中医学における月経痛の治療は、「通らない痛み」と「不足による痛み」に分け、それぞれ異なる治療法を採用します。症状が強い場合には、漢方薬での治療が早期改善に効果的であり、軽度であれば養生法によっても改善が期待できます。

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