【秋の肌・皮膚・呼吸器トラブル】食養生薬膳

秋は中医学的に「燥邪(そうじゃ)」が体に入りやすい季節です。この燥邪は「乾燥の邪気」を意味し、体内の水分バランスを崩し、さまざまな不調を引き起こします。夏の強い陽熱によって消耗された「正気(せいき)」、つまり体の健やかさを保つエネルギーが減少している状態が、秋の乾燥と重なり、さらに不調を増幅させるのです。以下、秋に多く見られる具体的な不調とその対策を詳しく解説します。

1. 口や喉の乾燥

秋に乾燥が原因で最も現れやすい症状のひとつが、口や喉の乾燥です。燥邪が体に入ると、体内の水分が消耗され、口の渇きや喉の痛み、喉が乾く感覚が強まります。また、声が枯れることもあり、話すと喉がすぐに痛くなるといったことも多く見られます。この乾燥は、日常的に水分を補ってもすぐに喉が渇くという特徴があり、燥邪による乾きは外気による乾燥だけではないため、体内からも潤いを保つケアが重要です。

対策:梨や白きくらげ、蜂蜜などの潤いを保つ効果のある食品を摂取することが推奨されます。特に梨は「肺を潤す」とされ、乾燥による喉の不調に役立つ果物です。また、乾燥を防ぐために温かいスープやハーブティーを飲むことも効果的です。

2. 空咳(乾いた咳)

燥邪が肺に影響を及ぼすと、空咳が出やすくなります。この空咳は痰の少ない乾いた咳で、しばしば長引きやすいのが特徴です。秋に急に冷たい風が吹いたり、乾燥した空気にさらされたりすると、喉の潤いがさらに奪われ、咳が悪化することがあります。特に、夜に咳がひどくなる場合も多く、睡眠の質が低下する原因にもなります。

対策:百合根や銀耳(白きくらげ)、または杏仁などを使ったスープやお茶を飲むと、肺の潤いを補う効果が期待できます。また、部屋の加湿を行うことも有効です。加湿器を使用して乾燥を防ぎ、喉を潤すことが重要です。

3. 便秘(乾燥型の便秘)

秋の燥邪は大腸にも影響を与え、「乾燥型の便秘」を引き起こすことがあります。中医学では、肺と大腸が表裏関係にあるとされており、肺が乾燥の影響を受けると、大腸も乾燥し、便秘につながります。このタイプの便秘は、便がコロコロと固くなり、排便が困難になります。また、切れ痔になりやすいのも特徴です。

対策:潤いを補うために、黒ごまやオリーブオイル、はちみつなどの潤滑性のある食材を摂ることが推奨されます。また、腸内環境を整えるために発酵食品(ヨーグルトや味噌など)や食物繊維(さつまいも、りんごなど)も摂ると良いでしょう。朝に温かい水を飲むことも、腸の動きを助け、便秘解消に役立ちます。

4. 肌の乾燥と肌荒れ

燥邪の影響は肌にも現れ、肌が乾燥しやすくなります。乾燥によって肌が荒れたり、カサカサした質感になったりし、かゆみや赤みが出ることもあります。皮膚は肺と密接に関係しているため、肺の不調は肌に直接影響しやすいのです。特に秋は紫外線も落ち着いてくる一方、乾燥が肌に負担をかけやすい季節です。

対策:食事では、ビタミンEを豊富に含むアーモンドやナッツ類、魚(特に青魚)を摂取し、肌を内側から潤すことが重要です。また、適度な油分も肌の乾燥防止に効果的です。さらに、保湿クリームやオイルでのスキンケアを欠かさないようにし、秋から冬にかけての肌の潤いを保ちましょう。

5. 夏の疲れと風邪

秋は夏の強い陽熱で消耗した「正気」の回復が追いつかず、体が弱りやすい季節です。このため、秋に入ってからも夏の疲れが抜けず、体がだるく、気力が出にくいと感じることがあります。また、冷たい風や朝晩の気温差によって風邪を引きやすくなることも特徴です。

対策:この時期には、体を温め、エネルギーを補う食材を摂取することが大切です。生姜やネギ、鶏肉や黒豆などの温性の食材を摂ることで、冷えに対応し、体力を回復させることが期待できます。また、過労を避け、しっかりと睡眠をとることで、体力の回復を図りましょう。

6. 舌の乾燥(裂紋)

燥邪の影響により、舌が乾燥してひび割れ(裂紋)が見られることがあります。この症状は、体全体の潤いが不足しているサインとされ、潤いを補う必要があることを示しています。舌が乾燥すると、口の中も乾きやすくなるため、口内炎ができたり、味覚が鈍くなったりすることもあります。

対策:普段から水分を適度に摂り、乾燥を防ぐために、白きくらげやレンコンなどの潤いを補う食材を食べることが効果的です。また、スープやお粥などの消化しやすい形で水分を補うのも良い方法です。さらに、ストレスも乾燥を促進させる要因であるため、リラックスできる時間を持つことも大切です。

秋の養生のポイント

秋に見られるこれらの不調は、「燥邪」の影響が大きいため、体に潤いを補うことが重要です。乾燥対策として、日常の食事に潤いを補う食材を積極的に取り入れ、必要に応じてスキンケアや室内の加湿などの外的な対策も行うと良いでしょう。また、夏の陽熱による消耗が秋に影響を与えているため、体を温めることも併せて行うことが推奨されます。

中医学では、季節ごとの養生が非常に重要であるとされており、特に秋は乾燥と冷えへの対策をバランスよく行うことで、冬に備えた健やかな体を保つことができます。

いいなと思ったら応援しよう!